【連載Vol.4.5】AIでは出来ない「最終決定と責任」

こんにちは!名古屋起業スタートビジョンラボです。

前回のVol.4では、バックオフィス業務における「Jカーブの谷」を乗り越える覚悟についてお話ししました。
自動化はあと1年で「当たり前」になる。そんな強烈な危機感を共有させていただきました。

ここで少し趣向を変えて、今回は「特別号」として、私たち税理士事務所側の裏側のお話をさせてください。

「AIの進化によって、税理士の仕事はなくなるのではないか?」

皆様もそんなニュースを目にしたことがあるかもしれません。
私たちは、通常の税理士業務に加え、事業融資(資金繰り)のサポートや、社会保険労務士と連携した労務対応など、多角的に経営者を支える事業を展開しています。

世の中に数ある事務所の中で、私たちが今後AIをどう活用し、どのような未来を予想しているのか。
そして、どれだけAIが進化しても「絶対にAIには奪われない人間の領域」とは何なのか。

【AIという便利な道具を使いこなし、経営者としての真の役割を果たしたい】とお考えの方は、ぜひ最後までじっくりお読みください!

 

・旧態依然とした事務所は消える?「作業」の価値がゼロになる未来

最近、「AIがこれだけ優秀だと、もう士業って必要ないんじゃないか?」や、「10年後、仕事が無くなっている業種に士業事務所も入るのでは?」といった事を耳にする機会がありました。
本音を申し上げると、「領収書を入力するだけ」「申告書の数字を計算するだけ」という旧態依然としたスタイルの税理士事務所は、これから非常に厳しい時代を迎えると思います。
当然ですが、それらはAIが最も得意とし、最も速く、最も正確にこなす「作業」だからです。

これまでは、「正確に帳簿を付けること」そのものに一定の価値があり、対価(報酬)が発生していました。
しかし、API連携やAIによる自動化が当たり前になる未来において、その単なる「作業」の価値は限りなくゼロに近づいていきます

これは何も税理士業界に限った話ではありません。
中小、零細、大企業関係なく、「手順の決まった作業」を売りにしているすべての事業体が直面する、避けられない現実です。

 

・AIが創り出す「時間」を、「品質」と「多角的な提案」へ

では、私たちのような専門家はAIを活用してどう変化していくのか。
それは、作業の自動化によって浮いた時間を、「皆様の事業を前進させるための多角的な提案」に充てることです。

私たちが提供している「税務・融資・労務のサポート」について、実は、AIを使えば「今まで人間にできなかった全く新しいことができるようになる」わけではありません。
融資の精度を高めるためのシミュレーションも、資金繰りの先読みも、労務と財務を連動させた採用計画の策定も、すべて私たちがこれまで人間(専門家)の頭と手を使って行ってきたことです。

AIにできることは人間にもできますし、その逆もしかりです。唯一にして最大の決定的な違いは、その「処理スピード」です。

 

・「作業領域の分担」がこれからのスタンダードになる

業務効率を極限まで高めるのであれば、これからの未来は「人間とAIの作業領域を明確に分ける」という考え方がすべてのビジネスで標準(スタンダード)になります。

・融資の精度向上: 過去の膨大なデータに基づく「銀行員が懸念を抱くポイントの抽出」まではAIに任せ、人間はその結果をもとに、経営者の熱量をどう面談で伝えるかの「対話」に時間を割く。

・資金繰りの先読み: 帳簿の分析や「3ヶ月後のショートリスクの察知」はAIに監視させ、人間はその危機をどう乗り越えるかの「改善策の壁打ち相手」に徹する。

・労務と財務の連動: 人件費の推移や利益率のデータ抽出はAIに投げ、人間は「このタイミングで採用することが、会社の理念に合っているか」を経営者と一緒に悩む。

AIに「過去の集計とパターンの予測(下準備)」を任せ、人間(専門家)はその分、経営者の皆様と顔を突き合わせる時間に圧倒的なリソースを投下する。
これが実現できれば、これまで以上に皆様の期待や希望に深く寄り添うことができ、結果として会社の成長に対する「真の一助」になれる。
私たちはそう考えています。

 

・どれだけ進化してもAIが人間に代われない領域:「最終決定と責任」

ここまでAIの凄さをお話ししてきましたが、ここで最も重要な本質をお伝えします。
どれほどAIが進化し、完璧な事業計画のアイデアや正確な資金繰り予測を出してきたとしても、絶対に人間にとって代わることが出来ない領域があります。

それは、「最終決定による責任」です。

・AIは「リスク」を背負えない
 AIはあくまで、選択肢を提示し、業務負担を減らすための「便利な道具」に過ぎません。

・AIが「この事業計画なら融資に通る確率が高いです」と提案してきても、実際に借金を背負い、申込書に実印を押すのは「経営者(人間)」です。

・AIが「この人材を採用すべきです」とデータを提示しても、その人の人生を預かり、毎月給料を払い続ける覚悟を決めるのは「経営者(人間)」です。

・AIが完璧な計算をして税務申告書を作成しても、最後にその内容を担保し、税務署に対して署名捺印をするのは私たち「税理士(人間)」です。

AIは、失敗した時に「ごめんなさい」と全ての責任をとってくれるわけではありません。
私たち人間がAIを使って徹底的に業務を効率化し、時間を作る本当の理由は、「楽をするため」ではありません
経営者が孤独の中で「リスクを背負い、重い決断を下す」ための精神的・時間的な余白を作るためなのです

 

・どの企業も同じ。AI活用は「個々のスキルと覚悟」で無限の差がつく

この「AIは道具であり、決定と責任は人間にある」という本質は、どんな規模の企業でも同じです。
大企業だからAIを使いこなせる、零細企業だから使えない、ということはありません。
個々の人間が、どれだけAIに適切な指示を出し、出てきた結果に対して「自分が責任を持つ」という覚悟を持てるか。
そのスキルの差で、活用の道は無限に広がっていきます。

私たちが日々AIと格闘し、失敗を繰り返しながら学んでいるのは、私たち自身が皆様の「重い決断」を支える最強の参謀としてアップデートし続けるためです。

皆様が最終決定を下すその瞬間に、最も確からしいデータと、専門家としての血の通ったアドバイスを添えること。
それが、AI時代における私たちの存在意義(未来予想図)です。

 

・まとめ

本日は特別号として、AI時代における専門家の未来予想図と、絶対に変わらない人間の役割についてお話ししました。

・「作業」の価値は下がり、「多角的な提案」の価値が上がる。

・AIは時間と選択肢を創る便利な道具である。

・しかし、「最終決定による責任」だけは、絶対にAIには代われない。

AIにすべてを丸投げして責任まで押し付けようとする思考停止は、経営の放棄です。
便利な道具を最大限に使いこなし、最後の最後、一番重いハンコを押すのは自分であるという覚悟を持つこと。

この5月の準備編を通して、そのマインドセットが皆様の中に少しでも芽生えていれば嬉しく思います。
6月からの実践編では、いよいよこの覚悟を胸に、具体的にAIをどう実務に落とし込んでいくのかをお伝えします。どうぞご期待ください!

 

・今回の宿題

「AIが完璧な選択肢を3つ提示してきたとき、最後の1つを選ぶ『あなたの判断基準(理念)』は何ですか?」

データ上はB案が一番儲かるかもしれない。でも、自分の信条やお客様への想いに照らし合わせるとA案をやりたい。
その「理屈を超えた最後の人間くさい判断基準」こそが、AIには絶対に真似できない、あなたの会社だけの価値になります。

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