【前編】銀行が本当に見ている返済能力とは

資金繰り償還と利益償還は何が違うのかを解説します

こんにちは!名古屋起業スタートビジョンラボです。

「融資の審査では、利益が出ていれば返済能力があると判断されるんじゃないの?」
——そう思っている経営者のみなさんは、少なくありません。

実はこれ、半分正解で半分は違います。
銀行や日本政策金融公庫の担当者が返済能力を判断する際、「利益があるかどうか」だけでなく、「実際に手元に現金が残るかどうか」を別の軸で見ています。
この2つの視点を理解しているかどうかで、融資相談の場での説明力がまったく変わってきます。

今回は「資金繰り償還」と「利益償還」という2つの概念の違いを、実務の視点から丁寧に解説します。
融資の返済設計に不安を感じている経営者のみなさん、ぜひ最後までじっくりお読みください!

 

・利益償還とは何か|PLベースの返済能力

利益償還とは、PL(損益計算書)上の利益で借入金を返済できるかどうかを見る考え方です。

計算式はシンプルです。

・税引後利益+減価償却費=返済原資(年間)

減価償却費(げんかしょうきゃくひ)とは、建物・設備・車両などの固定資産を購入した際に、その費用を複数年に分けてPL上に計上する会計処理のことです。
実際にはすでに支払いが終わっているため、現金の流出を伴わない費用です。
つまり、PLでは費用として引かれているのに、実際には手元に残っているお金ということになります。

この「税引後利益+減価償却費」が、年間の返済額を上回っていれば、利益償還の観点では「返済能力あり」と判断されます。

 

・資金繰り償還とは何か|実際の現金で返せるか

一方、資金繰り償還とは、実際の現金の動きベースで返済できるかどうかを見る考え方です。

PLの利益と実際の手元現金がズレることは、前回のコラムでお伝えした通りです。
売掛金(まだ回収できていない代金)が多ければ、利益は出ていても手元の現金は少ない状態になります。

資金繰り償還では、以下のような視点で返済能力を判断します。

  • 毎月の実際の入金額はいくらか
  • 毎月の実際の出金額(固定費・変動費・税金など)はいくらか
  • 差し引いた後に、返済額を捻出できる余裕があるか

つまり、「利益が出ているか」ではなく「現金が残るか」が資金繰り償還の核心です。

 

・なぜ銀行は両方を見るのか

「利益償還で問題なければ、それでいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし現場では、利益償還は問題ないのに資金繰り償還では苦しい、というケースが実際に起きます。

典型的なパターンがこれです。

  • 利益は出ている(PLは黒字)
  • しかし売掛金の回収が遅く、手元現金が少ない
  • 返済日が来ても、口座残高が足りない

PLの数字だけを見て「利益があるから大丈夫」と判断していると、返済日に口座残高が不足するという事態が起きます。
銀行の担当者はこのリスクを熟知しているため、PLの利益だけでなく、実際のキャッシュの動きを必ず確認します。

 

・融資相談でこの話を使う|担当者の信頼を得る説明の仕方

この2つの概念を理解していると、融資相談の場で大きなアドバンテージになります。

担当者から「返済能力についてどのようにお考えですか?」と聞かれた際に、

皆様:「PLベースでは税引後利益と減価償却費の合計で年間○○万円の返済原資があります。また、実際の資金繰りベースでも月次で○○万円の余裕があることを資金繰り表で確認しています」

と答えられる経営者は、担当者から見て「数字を把握している、信頼できる経営者」という評価を受けます。(これを即答で仰られた経営者様がかつてお見えでしたが、ご自身で計数管理を徹底されており、当時勤めていた金融機関の支店の融資から絶大な信頼を得ておりました。)

逆に「利益は出ているので大丈夫だと思います」という答えだけでは、担当者の頭の中に「本当に資金繰りを把握しているのだろうか」という疑問が残ります。

 

・AIを使った返済能力の把握|使える場面と限界

返済能力の計算にAIを活用する場合、数値の整理と計算補助として有効です。

「税引後利益・減価償却費・借入返済額のデータを入力したら、利益償還の観点での返済余裕額を計算して」という使い方は機能します。
複数の借入がある場合の合計返済額の整理なども、AIは素早くこなしてくれます。

ただし、「この返済計画が自社の資金繰りに無理がないか」という判断はAIにはできません。
売掛金の回収サイクル・季節変動による入金の波・取引先ごとの支払い遅延リスク——
こうした現場情報は経営者自身が持っている情報です。
計算の整理はAIに任せ、最終的な判断は自分で行う。この役割分担が重要です。

 

・まとめ

今回の前編で押さえておきたいポイントを整理します。

  1. 利益償還はPLベースの返済能力。
    税引後利益+減価償却費が年間返済額を上回るかどうかで判断する。
  2. 資金繰り償還は実際の現金ベースの返済能力。
    利益が出ていても手元現金が不足すれば返済は滞る。銀行が本当に重視しているのはこちら。
  3. 両方の言葉で返済能力を説明できる経営者は、融資相談の場で圧倒的に有利になる。
    数字を把握していることそのものが、担当者の信頼を生む。

最後に、一緒に考えてみてください。

自社の月々の返済額が、利益ベースではなく実際の手元キャッシュから無理なく捻出できているか、今すぐ確認できますか?
「利益は出ているから大丈夫」という感覚だけで返済を続けているとしたら、一度資金繰り表と照合してみてください。

後編では、業種別の資金繰りパターンと、返済が苦しくなったときに取るべき行動を具体的にお伝えします。

 

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