銀行員が融資審査でPL・BSのここを見ている
経営者が知るべき金融機関の視点とは
こんにちは!名古屋起業スタートビジョンラボです。
7月シリーズ「経営者の財務リテラシー入門」の最終回です。
第1回から第3回にかけて、財務諸表の必要性・PLの読み方・BSの読み方をお伝えしてきました。
最終回の今回は「視点を逆転」させます。
経営者がPLやBSを読む視点ではなく、金融機関の担当者が審査でどこを見ているかという視点でお伝えします。
この視点を持つことで、財務諸表の見方が大きく変わります。
融資を受けたい、または次の融資につなげたいという経営者のみなさん、ぜひ最後までじっくりお読みください!
・金融機関は財務諸表の「何を」「なぜ」見るのか
審査は数字の良し悪しだけではない
融資審査において、金融機関は決算書や試算表の数字を確認します。
ただし「数字が良ければ通る、悪ければ通らない」という単純な話ではありません。
金融機関が財務諸表を通じて本質的に確認したいのは、「この会社は将来にわたって返済し続けられるか」という一点です。
過去の数字はその判断材料に過ぎません。
担当者が財務諸表で確認する3つのこと
金融機関の担当者が財務諸表を見るとき、主に以下の3点を確認しています。
① 返済能力:毎月の返済額を継続的に支払えるだけの利益とキャッシュが生まれているか
② 財務の安全性:自己資本が十分にあり、急な損失が出ても経営が継続できる体力があるか
③ 数字のトレンド:直近2〜3期の数字が改善傾向にあるか、悪化傾向にあるか
この3点を頭に置いた上で、PLとBSの具体的なチェックポイントを見ていきましょう。
・PLで見られるポイント
経常利益の水準と安定性
PLで最も重視されると言われているのが経常利益です。
(実際の実務においては全ての数字が重視されますので、これだけ~というものはないのですが...)
前回お伝えしたように、経常利益は「営業利益から借入金の利息を差し引いた後の利益」であり、金融コストを負担した上でも利益が出ているかを示します。
担当者が確認するのは、経常利益の金額だけでなく「安定して出続けているか」という点です。
ある年だけ突出して良くても、他の年が赤字であれば、安定性がないと判断されます。
また経常利益がマイナス(経常赤字)の状態では、多くの金融機関で融資の審査が厳しくなります。
赤字でも融資を受けられるケースはありますが、その場合は今後の改善計画の説明が必須になります。
売上・粗利率のトレンド
担当者は売上高の推移と粗利率の変化も確認します。
売上が毎期伸びていれば「成長している事業」として評価されます。
一方、売上が伸びていても粗利率が下がり続けている場合、「収益構造に問題がある」と見られることがあります。
2〜3期分の決算書を並べて「自社の数字がどう動いているか」を把握しておくことが、面談での説明力につながります。
・BSで見られるポイント
自己資本比率と債務超過の有無
BSで最初に確認されるのが純資産の状態です。
前回お伝えした通り、純資産がマイナスの債務超過は融資審査における大きなマイナス要因です。
自己資本比率(純資産÷総資産)については、業種にもよりますが10%を下回ると融資審査で厳しく見られる傾向があります。
20%以上あれば、財務の安全性として一定の評価を受けられます。
流動比率と現預金残高
流動比率(流動資産÷流動負債)は、短期的な支払い能力を示す指標です。
この数字が100%を大きく下回っている場合、「近い将来に資金ショートが起きるリスクがある」と判断されます。
また現預金残高の水準も確認されます。
月商(月の売上)の1〜2ヶ月分程度の現金を保有していると、資金繰りに余裕があると評価されやすくなります。
・最重要指標「債務償還年数」とは何か
融資審査において、特に重視される指標が債務償還年数(さいむしょうかんねんすう)です。
計算方法と目安
債務償還年数は「有利子負債(借入金の総額)÷(経常利益+減価償却費)」で計算します。
たとえば借入金が3,000万円で、経常利益が200万円・減価償却費が100万円であれば
債務償還年数は3,000万円÷300万円=10年です。
一般的な目安として、10年以内であれば問題なし、15〜20年を超えると審査が厳しくなる傾向があります。
ただしこれはあくまで目安であり、業種や事業の成長性によって判断は異なります。
融資審査でどう使われるか
担当者は債務償還年数を見ることで、「今の利益水準が続いた場合、何年で借金を返し終えられるか」を把握します。
この年数が非常に長い場合、追加融資の審査は厳しくなります。
逆に短ければ、「返済余力がある」として次の融資にもつながりやすくなります。
自社の債務償還年数がどの水準にあるかを把握しておくと、融資相談の際に担当者との会話がスムーズになります。
・財務諸表を「育てる」という発想
ここまでお伝えしてきた内容を踏まえて、最後にひとつ大切な視点をお伝えします。
金融機関との長期的な信頼関係が次の融資を生む
財務諸表は「審査のためだけに整えるもの」ではありません。
毎月・毎期の経営活動の積み重ねが数字として表れるものです。
金融機関との関係は一度きりではなく、長期にわたって続くものです。
毎期コツコツと財務内容を改善し、担当者に「この会社は着実に良くなっている」と感じてもらうことが、次の融資・より良い条件での融資につながります。
私たちが支援してきた経営者の中にも、最初の融資では厳しい条件だったにもかかわらず、2〜3期かけて財務を改善することで、次の融資では金利が下がり、融資額も増えたというケースが複数あります。
財務諸表は「過去の成績表」ではなく、「未来の融資を引き寄せるための信頼の積み重ね」です。
そう考えると、毎月の試算表を確認する意味が変わってきます。
・まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- 金融機関が財務諸表で確認するのは「返済能力・財務の安全性・数字のトレンド」の3点
- PLでは経常利益の水準と安定性、BSでは自己資本比率と流動比率が重点チェック項目
- 債務償還年数を把握しておくと、融資相談の場での対話力が上がる
最後に、一緒に考えてみてください。
自社の直近の決算書で、経常利益と年間返済額を確認してみてください。
経常利益が年間返済額を上回っている状態であれば、返済能力があると判断される基本的な条件を満たしています。
この2つの数字を把握しておくことが、融資相談の第一歩になります。
次回予告:来月からは「融資を制する者が事業を制す」シリーズをお届けします。
融資とは何か・審査で落ちる理由・公庫の創業融資の仕組みまで、融資の基礎から実務まで一気通貫で解説します。
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