財務諸表が読めないと融資で損をする?

こんにちは!名古屋起業スタートビジョンラボです。

「財務や経理のことは、税理士さんに任せているので大丈夫です。」
創業間もない経営者の方とお話しすると、こういった言葉をよく耳にします。
税理士に依頼すること自体は、もちろん何も問題ありません。
ただ、「任せているから自分は知らなくていい」という状態が続いているとしたら、それは経営上の大きなリスクになり得ます。

今月のコラムでは、財務リテラシー——「数字を読んで経営に活かす力」をテーマにお届けします。
第1回の今回は、「なぜ経営者自身が財務諸表を読めなければならないのか」というお話からはじめます。
財務のことは専門家頼みで、自社の数字をあまり見る時間のない経営者のみなさん、ぜひお時間を作って最後までじっくりお読みください!

 

・「税理士に任せているから大丈夫」は本当に大丈夫か

税理士に記帳や申告を依頼することは、経営者として正しい選択です。
専門家に任せることで、本業に集中できます。
ただし、「任せる」と「丸投げ」は別物です。

・丸投げ経営者が気づかないうちに失っているもの

丸投げとは、毎月の試算表や決算書を受け取っても内容を確認せず、「問題なければそれでいい」と処理してしまう状態のことです。
この状態が続くと、経営者は自社の財務状況をリアルタイムで把握できなくなります。
たとえばこんな場面を想像してみてください。

取引先から「来月、支払いを少し待ってほしい」と連絡が入ったとします。
このとき、自社の現金残高は今どのくらいで、来月の支出はどれだけあるか——この問いにすぐ答えられますか?
即答できない場合、経営判断が後手に回ります。
最悪の場合、自社も資金ショートに陥りかねません。

財務を丸投げしている経営者が気づかないうちに失っているのは、経営判断のスピードと精度です。
財務を「わかる」と「わからない」では何が違うのか
財務がわかる経営者は、数字を見て「今何が起きているか」「このままいくと何が起きるか」を自分の頭で考えられます。
一方、財務がわからない経営者は、税理士から「今月は利益が出ました」と言われても、それが本当に良い状態なのか、どこに課題があるのかを自分で判断できません。
この差は、融資の場面で特に大きく出ます。

 

・融資審査の現場で起きていること

融資を申し込む際、提出した決算書や試算表の数字はもちろん確認されます。
しかしそれと同時に、担当者は面談の中で経営者自身の言葉も丁寧に見ています。

●銀行員・公庫担当者は何を見ているか
日本政策金融公庫や銀行の担当者が面談で必ずといっていいほど確認することのひとつが、「経営者が自社の財務状況を正確に把握しているか」です。
具体的には、こんな質問が飛んできます。

  • 「現在の売上と粗利はどのくらいですか?」
  • 「今期の着地見込みはどう見ていますか?」
  • 「資金繰りに余裕はありますか?」

これらは難しい問いではありません。
ただ、自社の数字を日常的に見ていない経営者は、この場でしどろもどろになってしまいます。

 

・数字を語れない経営者が審査で不利になる本当の理由

融資審査は、数字の良し悪しだけで決まるわけではありません。
担当者が最終的に見ているのは、「この経営者は、自分の事業をきちんと管理できているか」という信頼性です。
自社の数字を語れない経営者は、たとえ帳簿上の業績が良くても、「この方は自社を把握していない」という印象を与えてしまいます。
逆に、業績が平均的であっても、自社の課題と改善策を数字で語れる経営者は、担当者からの評価が上がります
実際、我々が支援してきた経営者の中にも、業績は悪くないのに「数字について聞いたら答えられなかった」という理由で、追加書類の提出を求められたケースがあります。
財務リテラシーは、融資審査における「見えない評価軸」のひとつなのです。

 

・財務諸表は「成績表」ではなく「経営の地図」

多くの経営者が財務諸表に苦手意識を持つ理由のひとつは、「難しい数字の羅列」というイメージです。
しかし財務諸表は、本来「今の自社の状態を地図のように示したもの」です。
地図が読めなければ、目的地にたどり着けません。
財務諸表が読めなければ、経営の現在地がわかりません。

 

・PLとBSの役割分担を30秒で理解する

財務諸表の中で経営者が特に理解しておくべきものが、損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)の2つです。
一言で言えば、PLは「一定期間の経営成績」、BSは「ある時点での会社の財産と借金の状態」を示しています。
・PLは映画のようなものです。
1年間(または1ヶ月間)の事業の流れ—―売上がいくらあって、費用がいくらかかって、最終的にいくら残ったか——をストーリーとして見せてくれます。
・BSは写真のようなものです。
決算日時点での会社の「資産(持っているもの)」「負債(借りているもの)」「純資産(自己資本とも言い、資産から負債を引いた自分のもの)」のスナップショットです。
この2つをセットで見ることで、「売上は伸びているのに手元のお金が減っている」という不思議な状態の原因も見えてきます。

 

・経営判断に財務を使うとはどういうことか

財務諸表を経営に活かすとは、たとえばこういうことです。

例①:先月の粗利率(売上から原価を引いた利益の割合)が急に下がっていた。
解①:PLを見ていれば、「原材料費が上がったのか、値引きをしすぎたのか、それとも固定費の割合が増えたのか」を分析する出発点になります。
例②:BSの現預金残高が3ヶ月前より大幅に減っていた。
解②:売上は伸びているのに現金が減っているなら、売掛金(まだ回収できていない代金)の回収が遅れているか、在庫が積み上がっているかもしれません。

こうした「異変に気づいて原因を探る」プロセスが経営管理です。
そしてこのプロセスは、財務諸表の意味を知っている経営者にしかできません。

 

・まず「この3つの数字」だけ押さえる

財務リテラシーといっても、最初から完璧に理解しようとする必要はありません。
まずは「この3つの数字を即答できる状態にする」ことを目標にしてみてください。
重要なのは、「売上・粗利率・現預金残高を即答できる状態にする」です。

① 売上(今月・今期累計)
事業の規模感と進捗を把握する基本中の基本です。
今月いくら売れたか、今期の計画に対してどの位置にいるかを常に意識しておくことが重要です。

② 粗利率(売上総利益率)
売上から原価を引いた残りの割合です。
この数字が下がると、いくら売上を伸ばしても利益が出にくくなります。
自社の粗利率の「適正な水準」を把握しておくことが、経営判断の基準になります。

③ 現預金残高
今この瞬間、自社の口座にいくらあるか。これは経営者が毎日確認すべき数字です。
利益が出ていても現金がなければ、仕入れも支払いもできません。

この3つを即答できるようになるだけで、経営者としての財務感覚は大きく変わります。
そしてこの感覚こそが、融資審査の場でも、日常の経営判断の場でも、大きな武器になります。

 

・まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • 財務の「丸投げ」は、経営判断のスピードと精度を失うリスクがある
  • 融資審査では、数字の良し悪しだけでなく「経営者が自社を把握しているか」が見られている
  • まずは売上・粗利率・現預金残高の3つを即答できる状態を目指すことからはじめる

 

・最後に...

自社の「売上・粗利率・現預金残高」の3つを、今すぐ即答できる状態ですか?

1つでも出てこなかった場合は、今日から週に1回、試算表を開く習慣をつけることからはじめてみてください。
小さな習慣の積み重ねが、経営者としての財務感覚を確実に育てていきます。

次回予告:第2回は、財務諸表の中でも経営者が最初に読むべき「損益計算書(PL)」の具体的な読み方と、経営判断への活かし方をお伝えします。
PLのどこを見れば自社の課題が見えるのか、実務的な視点で解説します。

 

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