高級車を買って「企業評価」がダウンする?
【失敗事例】黒字企業が陥った決算対策の落とし穴
こんにちは、起業スタートビジョンラボです。
前回は、節税によるキャッシュ(現金)の減少が、銀行からの信用リスクを高める可能性があるというお話をしました。
今回は、より具体的なケーススタディとして、多くの経営者様が検討される「決算直前の高級車購入」について取り上げます。
- 「車なら資産として残るし、減価償却費で利益も圧縮できるから一石二鳥だ」
そう考えて実行したある黒字企業のA社が、なぜ翌年の融資審査で苦労することになったのか。そのメカニズムを紐解いていきます。
■ 事例:H社の決算対策
業績好調なH社は、決算を前にして大きな利益が出る見込みとなりました。
そこで社長は、兼ねてから欲しかった1,000万円の高級車を社用車として購入することにしました。
- 購入方法:手元の現金が減るのは嫌なので、全額ローン(借入)で購入。
- 狙い:減価償却費を計上して利益を圧縮しつつ、車という資産を手に入れる。
一見、理にかなった対策に見えます。
しかし、いざ決算書が出来上がり、銀行に提出したところ、担当者の反応は芳しくありませんでした。
- 「H社長、今期は借入がずいぶん増えましたね……。来期の融資枠については、少し検討が必要です」
なぜ、黒字で資産も増えたのに、銀行の評価は下がってしまったのでしょうか?
■ 落とし穴①:B/S(貸借対照表)のバランス悪化
銀行が融資審査で重視するのは、「資産の質」です。
H社は車という「資産」を手に入れましたが、その反対側で「借入金」も同額(1,000万円)増えています。
銀行から見ると、以下のように映ります。
- 資産の増加:換金性が低く、事業に直接お金を生まない資産(高級車)が増えた。
- 負債の増加:毎月の返済義務がある借金(ローン)が増えた。
もし事業用のトラックや営業車であれば、「将来の売上を作るための投資」と見てもらえます。
しかし、事業との関連性が薄い高級車の場合、銀行は「事業に不要な資産」とみなし、実質的な資産価値を低く見積もることがあります。
結果として、「返済義務(負債)だけが増え、返済原資を生む資産が増えていない」という評価になり、財務の健全性ランクが下がってしまったのです。
■ 落とし穴②:債務償還年数の悪化
もう一つ、致命的だったのが「債務償還年数」への影響です。
これは「今の借金を、今の稼ぐ力(キャッシュフロー)で返すと何年かかるか?」という、格付けにおける最重要指標の一つです。
H社のケースでは、ダブルパンチが起きています。
- 借入金の増加:ローンを組んだことで、計算の「分子(借金)」が増えた。
- 利益の減少:減価償却費などで利益を圧縮したことで、計算の「分母(返済原資)」が減った。
分子が増えて分母が減れば、当然ながら割り算の答え(年数)は大きくなります。
例えば、これまで「5年で返せる(正常先)」という評価だったのが、「15年かかる(要注意先)」という数値に跳ね上がってしまったのです。
■ 戦略的な購入か、単なる節税か
もちろん、社用車の購入すべてが悪いわけではありません。
重要なのは、「それが銀行評価にどう響くかをシミュレーションした上で判断したか?」という点です。
H社の場合、もし購入前に
- 「この車を買うと、償還年数が◯年から◯年に悪化するな」
- 「それだと来期の融資に影響が出るから、今回は見送ろう(あるいは安い車にしよう)」
という検討ができていれば、結果は違っていたはずです。
■ 次回予告:あなたの会社は何色? 1分でわかる診断ツール
「なるほど、借金と利益のバランスが大事なのは分かった」 「でも、自分の会社の『償還年数』や『格付け』なんて、どうやって計算すればいいの?」
そんな経営者様のために、次回は新しくなった「金融格付け診断ツール」をご紹介します。
難しい計算は一切不要。 決算書の数字をいくつか入れるだけで、あなたの会社が「安全圏(緑)」なのか「危険水域(赤)」なのか、ひと目で分かる優れものです。
3月決算の最終判断に、ぜひご活用ください。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう。

