銀行はココを見る!融資に強い決算書の読み方【Vol.6】
「知らなかった」では済まされない。プロは見抜く、粉飾決算の代償
こんにちは!起業スタートビジョンラボです。
全6回でお届けしてきた「銀行員はココを見る!融資に強い決算書の読み方」も、今回がいよいよ最終回です。
最後にお伝えするテーマは、経営者として絶対に踏み越えてはいけない一線、「粉飾決算(ふんしょくけっさん)」についてです。
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「粉飾なんて、ニュースの中の犯罪の話でしょ?自分には関係ない」
大多数の方はそう思われるかもしれません。
しかし、創業間もない時期や、少し業績が苦しい時に、「融資を通すために、少しだけ数字を良く見せたい」という誘惑に駆られる瞬間は、誰にでも訪れる可能性があります。
また、簿記の知識不足から、「悪気はなかったのに、結果的に粉飾と同じ状態になっていた」というケースも実は少なくありません。
今回は特に後半部分が厳しいお話になりますが、「知らなかった」では済まされない粉飾決算についてお伝えしたいと思います。
1. そもそも「粉飾」とは何か?
粉飾決算とは、簡単に言えば「会社の業績を、実際よりも良く見せること」です。
融資においては、「本当は赤字なのに、黒字に見せる(利益の水増し)」ことが問題になります。
【よくあるケース(意図的・無知を含む)】
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架空の売上を計上する: まだ納品していない(または存在しない)売上を、今期の数字に入れてしまう。
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在庫を水増しする: Vol.3でお話しした「在庫」を実際より多く数えて計上し、利益調整を行う。
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経費を隠す: 本来計上すべき経費を翌期に回して、当期の利益を減らさないようにする。
これらを、「決算のテクニック」や「調整」と勘違いされている方が稀にいらっしゃいますが、銀行から見ればこれらはすべて「虚偽報告(詐欺)」と同義です。
2. 金融の世界において「無知」は言い訳にならない
ここで、経営者の皆様にどうしてもお伝えしたいことがあります。
それは、「知らなかったでは済まされない」という現実です。
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「経理担当に任せきりだったので、在庫の数字が間違っているとは知らなかった」
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「売上の計上ルールを間違えていたなんて、気づかなかった」
たとえ悪意がなかったとしても、銀行に提出した決算書が事実と異なっていれば、それは「嘘の決算書でお金を借りようとした」ことになります。
厳しい言い方になりますが、「自分の会社の正しい数字を把握していないこと(無知)」は、それだけで経営者としての責任放棄と捉えられてしまいます。
ご自身のハンコを押して提出する決算書です。その数字には、全責任を持たなければなりません。
3. なぜ粉飾が発覚してしまうのか?
「少し数字をいじるくらいなら、バレないのでは?」 そう思うかもしれませんが、その甘い考えはプロには通用しません。
なぜなら、銀行が融資審査を行う際、単年度の決算書だけで判断することはないからです。
原則として「直近3期分(3年分)の決算書」を横に並べ、その「流れ(推移)」を徹底的に分析します。
企業活動は連続性があるため、 売上が伸びれば比例して売掛金や在庫も増えるのが自然ですし、原価率や経費率も急激には変わりません。
しかし、どこかで数字を操作(粉飾)すると、この「過去からの自然な流れ」が断ち切られ、必ずどこかに不自然な「歪み(矛盾)」が生じます。
多くの決算書を見てきた審査のプロ(ベテラン行員)は、この「時系列の違和感」を絶対に見逃しません。
- 「売上は横ばいなのに、3期並べると『売掛金』や『在庫』だけが年々増えている(架空計上の兆候)」
- 「過去2期と比べて、『粗利率(あらりりつ)』が今年だけ急激に良くなっている明確な根拠がない(利益の水増し)」
- 「帳簿上は3期連続黒字なのに、決算書の現預金残高が増えていない(利益が現金になっていない)」
嘘をついて一箇所をいじると、3期並べた時に必ず別の場所で計算が合わなくなります。
銀行員が見ているのは、「今の数字」ではなく「数字の整合性と連続性」なのです。
4. 粉飾が発覚した際に支払う「高すぎる代償」
もし粉飾が決算書の不整合や税務調査などで発覚した場合、待っているのは「怒られる」程度では済まない、会社存亡に関わるペナルティです。
① 融資の一括返済請求(即時の資金ショート)
銀行との契約(銀行取引約定書)には、「虚偽の報告をした場合、期限の利益を喪失する(分割払いの権利を失う)」と明記されています。
粉飾がバレた瞬間にこの条項が発動し、貸しているお金を「今すぐ全額耳を揃えて返してください」と請求されます。
当然、大半の企業にそんな大金があるはずもなく、事実上の「倒産宣告」を突きつけられることになります。
② 全金融機関からの「融資ストップ」と「ドミノ倒し」
「バレた銀行だけ使えなくなる」のではありません。
粉飾によりメインバンクが融資を引き上げたり、格付けを「破綻懸念先」以下に落としたりすると、その動きはまたたく間に他行にも伝播します。
また、返済が滞れば信用情報機関に事故情報が登録されるため、すべての銀行が一斉に手を引き、新規融資はおろか、既存融資の借換さえも不可能になります。
まさに、会社の血液(資金)が完全に止まる瞬間です。
③ 刑事告発と「信用の喪失」
悪質な場合、銀行から「融資詐欺」として刑事告訴されるリスクすらあります。
しかし、それ以上に怖いのは「信用の喪失」です。
一度でも「数字で嘘をついた経営者」という烙印を押されれば、銀行員はその経営者の言葉を二度と信用しません。
どれほど素晴らしい再建計画を作っても、「また嘘かもしれない」と思われ、再起のチャンスすら与えられません。
たった一度の過ちで、これまで積み上げてきた信用も、社員の生活も、会社の未来も、すべて失ってしまいます。
そのリスクを冒してまで、数字を飾る価値など、この世のどこにもありません。
まとめ:正しい数字こそが、最強の武器
全6回のコラムを通して、決算書の読み方をお伝えしてきました。 最後のポイントをまとめます。
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粉飾は「調整」ではなく「嘘」である。
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経営において「無知」は免罪符にならない。自分の会社の数字には責任を持つこと。
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苦しい時こそ、「ありのままの数字」で相談することが、信頼回復の唯一の道。
銀行が本当に応援したいのは、見せかけの数字が良い会社ではありません。
たとえ一時的に業績が悪くても、「自分の会社の状況を正しく把握し、嘘をつかずに泥臭く改善しようとする経営者」です。
決算書は、銀行のための書類ではありません。 あなた自身が会社の舵取りをするための大切な「羅針盤」です。
どうか、正しい数字と誠実に向き合い、長く続く強い会社を作ってください。
【最後に】
全6回の連載にお付き合いいただき、ありがとうございました!
「数字は苦手」だった方も、銀行員がどこを見ているのか、少し視点が変わったのではないでしょうか。
起業スタートビジョンラボでは、創業期の融資サポートだけでなく、経営者が「数字に強くなる」ための継続的なサポートも行っています。
「正しい決算書を作りたい」「銀行と対等に話せるようになりたい」 そんな熱い想いを持つ経営者様からのご相談を、心よりお待ちしております。

