起業するなら知っておくべき!利益率と利益額について
こんにちは!名古屋起業スタートビジョンラボです。
名古屋で起業を計画しているあなたにとって、資金調達は事業成功の鍵となります。
中でも、多くの起業家が利用するのが、国の支援制度である日本政策金融公庫の創業融資です。
この記事では、審査で特に重要視される「事業計画」の核となる利益率と利益額について、専門家である税理士の視点から深く掘り下げて解説します。
日本政策金融公庫の創業融資とは?そのメリット・デメリット
このコラムでは毎回のことになりますが、このコラムからご覧になられた方に向けて、改めて日本政策金融公庫の創業融資について説明します。
日本政策金融公庫は、国が100%出資する政府系金融機関です。
民間の金融機関では難しい、創業したての事業者でも融資を受けやすい支援を行っています。
以前まで「新創業融資制度」という名称の融資制度がありましたが、現在は新たな創業者向け支援の仕組みに移行しています。
メリット:なぜ創業融資に強いのか?
この融資制度は、原則として担保や保証人なしで利用できるため、起業家にとって大きなメリットとなります。
また、比較的低金利で長期の返済期間を設定できる点も、創業初期の資金繰りを安定させる上で非常に有利です。
税理士のサポートを受けることで、よりスムーズな手続きや審査通過の可能性を高めることも可能です。
デメリット:事前に知っておくべきこと
一方、デメリットとしては、審査基準が独自の視点で行われることが挙げられます。
特に、事業計画書の完成度や経営者自身の事業に対する熱意が厳しく見られますので、甘い事業計画では審査を通ることが非常に難しいです。
また、融資が実行されるまでに1〜2ヶ月程度の時間がかかるため、時間的な余裕をもって準備を進める必要があります。
審査で最も重要視される「事業計画書」のポイント
創業融資の審査では、事業計画書があなたのビジネスの信頼性を証明する最も重要なツールです。
審査官は、この計画書を通じてあなたの事業の将来性、収益性、そして返済能力を総合的に判断します。
利益率と利益額の違い:なぜ両方理解する必要があるのか?
創業融資の審査では、事業の収益性を判断するために「利益率」と「利益額」という2つの指標が使われます。
これらを正しく理解し、事業計画書に反映させることが、審査通過の鍵を握ります。
利益率とは?=ビジネスモデルの効率性を示す指標
利益率とは、売上高に対する利益の割合をパーセンテージで示したものです。
利益率(%)= 利益額 ÷ 売上高 × 100
この数値が高いほど、ビジネスモデルが効率的に利益を生み出していることを意味します。
例えば、原価が低いサービス業やソフトウェア開発などは、一般的に利益率が高くなる傾向にあります。
しかし、利益率が高くても、売上が少なければどうなるでしょうか?
例えば、利益率が50%の事業で、月間売上がたった10万円だとします。
この場合、利益額は5万円にしかなりません。これでは、事務所の家賃や生活費、そして将来の借入金返済を賄うことは難しいでしょう。
利益額とは?=事業の存続と返済能力を決定づける指標
一方、利益額とは、事業活動によって実際に手元に残る金額そのものです。
利益額 = 売上高 - 費用(原価、経費など)
この利益額が、事業の運転資金、従業員の給与、そして最も重要な融資の返済に充てられる源泉となります。
審査でより重視されるのは「利益額」
結論から言えば、日本政策金融公庫の審査では、利益率よりも「利益額」がより重視されます。
なぜなら、融資の返済は「利益額」からしか行えないからです。
利益率がいくら高くても、事業規模が小さく、利益額が少なければ、毎月の返済が困難になるリスクが高いと判断されます。
例えば、以下の2つの事業を比較してみましょう。
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事業A: 利益率50%、月間売上10万円、利益額5万円
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事業B: 利益率10%、月間売上100万円、利益額10万円
この場合、利益率は事業Aの方がはるかに高いですが、審査官の評価が高いのは事業Bです。なぜなら、事業Bの方が返済に充てられる利益額が2倍も多いからです。
審査官は、事業計画書に記載された売上計画が現実的かどうかを厳しくチェックし、その結果として、融資額の返済に十分な利益額を生み出せるかどうかを判断します。
そのため、事業計画書を作成する際は、利益率の高さだけでなく、それを実現するための具体的な販売戦略や市場規模を提示し、説得力のある利益額を明確にすることが非常に重要です。
創業融資の申請から実行までの流れ
創業融資の申し込みは、以下のステップで進みます。
全体の流れを把握し、融資実行から逆算していつまでに何をしなければならないかを確認するようにしてください。
コラムの最初にも記載しましたが、融資申込から実行まで時間が掛かる原因の一つに、創業計画書の作成や融資対策に時間を取られるためと言っても良いでしょう。
初めて事業融資を行う方にとっては、何が正解なのかが分からず書類作成の手が止まってしまい、想像以上に負担になることが多いようです。
当所にご相談に来られた方の中にも、最初はご自身で創業融資の申請準備を始めたものの、初めて見る書類や記載内容に苦戦し、どんどん時間的余裕が無くなってしまい焦ってご相談に見えた方もいらっしゃいます。
今回のコラムについては下記のスケジュールから言うと、「1」と「2」に該当します。
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事前相談:日本政策金融公庫や専門の税理士に相談し、融資の可能性を検討します。
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必要書類の準備:事業計画書、自己資金を確認できる通帳のコピーなどを準備します。
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申し込み:必要書類を揃えて申し込みを行います。
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面談:担当者と事業計画について面談します。事業への熱意や実現可能性を直接伝える重要な機会です。
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審査・融資決定:提出書類と面談内容をもとに審査が行われます。
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契約・融資実行:融資契約が締結され、指定口座に資金が振り込まれます。
ちなみに、この利益率や利益額を算定できなければ、融資申込にすら至ることが出来ません。
ですが、この利益率や利益額は事業内容にとって非常に重要な項目ですので、「これ以上は時間が掛かりすぎているから、この内容でいいかな、、、」と妥協して書類作成してしまうと、審査担当者から「この申込書、、、詰めが甘いな」と思われてしまいます。
審査担当者は、毎日のように事業申込書類を見ています。
提出された申込書や書類を見れば、その書類がどのくらいの完成度なのかも一目で見抜いてきます。
難しい内容を書く必要はありませんが、事業計画を綿密に立てた書類を提出できるよう、常日頃からご自身の事業内容や利益額の算出、経費負担額等を意識していくことが重要になります。
まとめ
この記事では、創業融資の審査における利益率と利益額の重要性について解説しました。
単に利益率が高い事業を計画するだけでなく、融資の返済に耐えうる十分な利益額を、現実的な売上目標に基づいて示すことが、審査通過の鍵となります。
今回のコラムは全業種共通の利益率・利益額についての考え方となりますが、次回から特定業種に限定した利益率と利益額について着眼したコラムを掲載します。
次回は建設業向けのコラムを掲載いたしますので、該当される業種の方は是非次回もご覧ください。
名古屋起業スタートビジョンラボでは、創業したての方向けに、日本政策金融公庫をはじめとした創業融資はもちろんのこと、幅広くトータルサポートを承っており、融資についてのご相談からご提案までさせていただいております。気になる方は是非、お気軽にご連絡下さい。