事業開始で失敗しないための知識について(会社設立後編)
会社設立後に陥りやすい「こんなはずじゃなかった…」不備や落とし穴
こんにちは!起業スタートビジョンラボです。
「よし、会社を設立したぞ!」と胸を躍らせたのも束の間、会社設立後に「こんなはずじゃなかった…」と頭を抱える経営者の方は少なくありません。
実は、会社設立の手続き自体はゴールではなく、その後の運営で必要な手続きや準備を怠ると、思わぬ不備や落とし穴に陥ってしまうことがあります。
この記事では、会社設立後に特に注意すべき不備や落とし穴について、具体例を交えながら税理士の視点から解説します。
これを読めば、会社設立後にあなたが「しまった!」とならないための対策がきっと見つかるはずです。
「会社設立後もスムーズに事業を進めたい」「税金や手続きでつまずきたくない」と考えているあなたは、ぜひ最後までじっくりお読みください!
1.会社設立後の「届出忘れ」が招く重大な不利益
・税務署への届出漏れ:税制優遇が受けられないリスク
会社設立後に最も陥りやすい不備の一つが、税務署への各種届出の提出漏れです。
会社を設立すると、法人設立届出書だけでなく、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書など、様々な書類を決められた期限内に提出する必要があります。
例えば、青色申告の承認申請書を出し忘れてしまうと、以下のような大きな不利益が生じます。
・最大65万円の青色申告特別控除が受けられない | 個人の確定申告と同様に、法人の青色申告にも特別控除があります これを利用できないのは、節税面で非常に大きな痛手です |
・赤字の繰越ができない | 法人税では、発生した赤字を最長10年間繰り越して、将来の黒字と相殺することができます(繰越欠損金) しかし、青色申告の承認がなければ、この制度を利用できません |
・欠損金の繰戻し還付が利用できない | 特定の条件を満たせば、当期に生じた赤字を前期の所得と相殺し、すでに納めた法人税の還付を受けることができる制度があります。これも青色申告が前提です |
以前、ご相談にいらしたソフトウェア開発会社のD社長様はご自身で会社設立の手続きをされたのですが、この「青色申告の承認申請書」の提出期限をうっかり過ぎてしまいました。
その結果、初年度に発生した赤字を翌年度の黒字と相殺できず、本来払う必要のなかった税金を支払うことになり、「こんなはずじゃ…」と悔やんでいらっしゃいました。
これらの届出は、会社の規模や事業内容によって提出の要否や期限が異なるため、すべてを自分で把握するのは非常に困難です。
提出漏れによる不利益を避けるためにも、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
・社会保険・労働保険の届出漏れ:ペナルティのリスク
従業員を雇用した場合、税務関係の届出だけでなく、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や労働保険(雇用保険・労災保険)に関する届出も必須です。
これらの届出を怠ると、以下のような落とし穴にはまるリスクがあります。
・保険料の追徴 | 本来支払うべき保険料を遡って徴収される可能性があります |
・遅延損害金 | 届出の遅延や保険料の滞納に対して、遅延損害金が発生することもあります |
・刑事罰 | 悪質なケースでは、法律に基づいた罰則が科される可能性もゼロではありません |
特に、社会保険は「強制適用事業所」に該当すると、法人であれば従業員が社長一人だけでも加入義務が発生します。
これは「知らなかった」では済まされない重要な注意点です。
従業員の安心のためにも、そして会社の信頼性を保つためにも、これらの届出は速やかに行いましょう。
2.会社設立後に見落としがちな経理・会計の不備
・どんぶり勘定:資金ショートの危険性
個人事業主から法人になった途端、「あれ、思ったよりお金がない?」と感じる経営者の方は少なくありません。
個人事業の時と同じようなどんぶり勘定を続けてしまうと、会社設立後はすぐに資金ショートという落とし穴に陥る可能性があります。
・公私の区別 | 法人では、会社の財産と個人の財産は厳密に区別しなければなりません 個人の生活費を安易に会社のお金で支払ったり、会社の売上を個人的な口座に入れたりすると 会計処理が複雑になるだけでなく、税務調査で指摘される原因にもなります |
・キャッシュフローの把握不足 | 売上は上がっているのに手元資金が減っていく「黒字倒産」は、まさにキャッシュフローの把握不足から起こります 日々の入出金を正確に記録し、常に資金の動きを把握しておくことが不可欠です |
以前、ご紹介で相談に来られた卸売業のE社長様は、会社設立後も個人事業の時の感覚で、会社の口座と個人の口座を混同して使っていました。
その結果、会計帳簿がめちゃくちゃになり、決算間際になってから多額の使途不明金が発生。
慌てて税理士を探されたものの、修正に多大な労力と費用がかかってしまいました。
このような不備は、日々の地道な記帳と、公私混同を避ける意識で防ぐことができます。
・領収書・請求書の保管不備:税務調査でのリスク増大
会社設立後は、すべての取引に関して領収書や請求書などの証拠書類を適切に保管することが義務付けられています。
これらの保管を怠ると、以下のような不備やリスクが発生します。
・経費として認められない | 証拠書類がなければ、その支出が本当に事業のためのものだったかを証明できません その結果、本来経費にできるものが認められず、余計な税金を支払うことになります |
・消費税の仕入れ税額控除ができない | 消費税の納税義務がある場合、仕入れにかかった消費税を差し引く「仕入れ税額控除」を受けるには、 適格請求書(インボイス)などの適切な書類が必要です。これがなければ、本来払う必要のない消費税を納税することになります |
・税務調査での信頼性低下 | 税務調査では、帳簿と証拠書類が一致しているか厳しくチェックされます。 書類の不備が多いと、会社全体の経理に対する信頼性が低下し、さらに詳しく調査される原因になりかねません。 |
「忙しくてつい溜め込んでしまった」「どこに置いたか分からなくなった」といったことのないよう、日頃から整理整頓を心がけ、定期的に整理する仕組みを作ることが重要です。
クラウド会計ソフトを利用するなど、デジタルでの管理も有効な手段です。
3.専門家との連携不足が招く経営上の落とし穴
・顧問税理士の不在:間違った税務処理と機会損失
会社設立後、特に小規模な会社ほど「顧問税理士はまだ早いかな…」と考えるケースが見られます。
しかし、これは非常に大きな落とし穴です。税務・会計の専門家である税理士がいないことで、以下のような不備や機会損失が生じる可能性があります。
・税務知識の不足 | 複雑な税法や改正をすべて把握するのは非常に困難です。知らず知らずのうちに間違った税務処理をしてしまい、過大に税金を納めてしまったり、逆に税務調査で追徴課税を受けたりするリスクがあります |
・節税対策の見落とし | 適用できる税制優遇措置や節税対策を見落としてしまい、不必要に多くの税金を支払ってしまうことになります |
・経営状況の把握遅れ | 適切な会計処理が行われていないと、自社の経営状況(利益、キャッシュフローなど)を正確に把握できません これは、今後の経営戦略を立てる上で致命的な不備です |
顧問税理士は、単に税務申告を代行するだけでなく、経営状況の分析や、資金繰りのアドバイス、時には日本政策金融公庫などの創業融資のアドバイスまで経営の心強いパートナーとなります。早めに専門家と連携することで、会社設立後の不安を解消し、本業に集中できる環境を整えましょう。
4.まとめ
会社設立後は、登記が完了したからといって安心してはいけません。
税務署や役所への各種届出の提出忘れ、経理体制の不備、そして専門家との連携不足は、会社設立後に陥りやすい代表的な不備や落とし穴です。
これらは、不要な税金やペナルティ、最悪の場合、事業継続の危機に直結するリスクをはらんでいます。
会社設立は新たなスタートですが、その後の運営を見据えた適切な準備と、必要に応じた専門家のサポートが、事業を軌道に乗せる上で非常に重要です。
今回ご紹介した注意点を参考に、あなたの会社設立後の運営がスムーズに進むことを願っています。
起業スタートビジョンラボでは、会社設立後の税務顧問はもちろん、複雑な届出の代行、経理体制の構築支援など、幅広くトータルサポートを承っております。
会社設立後の不安を解消し、安心して事業に集中したい方は、ぜひお気軽にご連絡ください。