【資金繰り表の作り方 第2回】エクセル記入例つき入力解説
日本政策金融公庫テンプレートで「過去の実績」を埋める方法
こんにちは!起業スタートビジョンラボです。
前回の第1回では、資金繰り表を作成するために必要な「物」(預金通帳や試算表など)や、「情報」(お金の流れの整理)といった「準備」について解説しました。
準備が整ったあなたは、今まさに日本政策金融公庫のエクセルテンプレートを開き、「さあ、入力を始めるぞ!」と意気込んでいるかもしれません。
しかし同時に、
- 「エクセルは開いたけど、このテンプレートのどこに、どの数字を入れればいいの?」
- 「預金通帳の数字を、どうやってこの表に転記すればいいの?」
と、手が止まってしまっていませんか?
ご安心ください。
全4回シリーズの第2回となる今回は、資金繰り表作成の「土台作り」とも言える「過去の実績」の入力方法について、具体的なエクセルの記入例を交えながらステップバイステップで解説していきます。
この記事を読みながら一緒に作業を進めれば、資金繰り表作成の最初の山場である「過去実績の入力」を確実にクリアでき、次ステップである「未来予測」に進むための強固な土台が完成します。
エクセルや経理が苦手なあなたも、ぜひパソコンの画面を見ながら一緒に作業を進めてみてください!
(前回のコラムをご覧になっていない方はこちらをクリック → 【資金繰り表の作り方 第1回】融資審査の鍵となる準備)
なぜ「過去の実績」の入力が重要なのか?
「融資審査は未来の計画が大事なのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、資金繰り表において「過去の実績」の入力は、未来予測と同じくらい、あるいはそれ以上に重要です。
1. 未来予測の「根拠」になるから
融資担当者は、あなたの作成した「未来の売上予測」を見るとき、必ず「過去の実績」と見比べます。
例えば、「過去6ヶ月間の平均売上(入金)が月100万円」なのに、何の根拠もなく「来月からは月300万円になります」という計画では、「この予測は甘いな」と判断されてしまいます。
過去の実績を正確に入力することは、「これまでの実績がこうだから、今後はこうなります」という、説得力のある未来予測を立てるための「根拠(土台)」作りになるのです。
2. 経営者の「数字の管理能力」が見られるから
日本政策金融公庫の担当者は、「経営者が自社のお金の流れをきちんと把握できているか」を厳しくチェックしています。
過去の実績入力が正確で、預金通帳の残高と資金繰り表の残高がピタリと合っていれば、「この経営者はしっかり数字を管理できる人だ」という信頼につながります。
逆にここが杜撰だと、「この人にお金を貸しても、きちんと管理できないのでは?」と不安視されてしまいます。
日本政策金融公庫のテンプレート(エクセル)を開いてみよう
まずは、第1回で準備したエクセルテンプレートを開いてください。
ここでは、日本政策金融公庫が提供している標準的な「資金繰り表(実績・計画)」を想定して解説します。
(日本政策金融公庫の各種書式のダウンロードはこちらをクリック → 日本政策金融公庫 各種書式ダウンロードページ )
テンプレートの基本的な見方(構成要素)
テンプレートを開くと、多くの項目が並んでいますが、構造はシンプルです。
ここでは日本政策金融公庫のテンプレート資金繰り表を元に、重要な部分を抽出して説明をします。
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前月繰越金:前月末の現預金の総合額を入力する欄(一番重要)
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収入の部:現金売上や売掛金回収など、会社に「入ってくるお金」を記入する欄。
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支出の部:仕入や人件費、家賃など、会社から「出ていくお金」を記入する欄。
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差引過不足:単純な「収入合計 - 支出合計」の計算結果です。
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経常外収支・財務収支:支払利息や、借入・返済など、本業以外のお金の動きを記入する欄。
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翌月繰越金(残高):月の初めに手元にあったお金(前月繰越金)と、その月の全ての増減を合計した、月末の手元残高です。
ステップバイステップ!「過去の実績」入力ガイド
それでは、第1回で準備した「預金通帳」や「試算表(会計ソフトのデータ)」を横に置いて、実際に入力作業を始めましょう。
ステップ1:「前月繰越金(月初残高)」を記入する
最も重要で、全ての計算のスタート地点となる数字です。
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どこを見る?:入力する実績期間の「一番最初の月」(例:6ヶ月前の月初)の「全ての預金通帳の残高」と「手元現金の残高(現金出納帳)」。
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どう記入する?:(記入例)
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A銀行の残高が100万円、B銀行が50万円、手元現金が5万円の場合。
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最初の月の「前月繰越金(または月初残高)」の欄に、合計の「1,550,000」円と入力します。
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【注意!】 この最初の「繰越金」が1円でもズレていると、この後の計算がすべてズレてしまいます。
必ず、全ての口座と現金を合計した「総残高」を正確に入力してください。
ステップ2:「収入の部(営業収入)」の記入方法
次に、本業で入ってきたお金を記入します。
【最重要ポイント】 ここには「試算表の売上高」ではなく、「預金通帳に実際に入金された金額」を記入します。
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どこを見る?:預金通帳の「入金」や「お預り」の欄。
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どう記入する?:(記入例) 4月の実績として、
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レジの現金売上が合計で20万円あり、銀行に入金した。
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A社から4月10日に「売掛金」として30万円の振込入金があった。
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B社から4月20日に「売掛金」として50万円の振込入金があった。
→ 4月の「収入の部」の「現金売上」に「200,000」、「売掛金回収」に「800,000」(30万+50万)と入力します。
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※試算表上の4月の「売上高」が120万円でも、入金が(3月分の売上が入金されるなどして)100万円なら、資金繰り表には「100万円」と記入するのが正解です。
ステップ3:「支出の部(営業支出)」の記入方法
同様に、「実際に支払いをした金額」を記入します。
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どこを見る?:預金通帳の「出金」や「引出し」の欄、現金出納帳。
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どう記入する?:(記入例)
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4月の通帳から、C社への仕入代金が4月15日に40万円引き落とされた。
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4月25日に給与を合計30万円振り込んだ。
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4月27日に家賃8万円が引き落とされた。
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→ 4月の「支出の部」の「仕入(買掛金支払)」に「400,000」、「人件費」に「300,000」、「家賃(諸経費)」に「80,000」と入力します。
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※【クレジットカード払いの注意点】
3月中にクレジットカードで消耗品(5万円)を買っていても、引き落とし日が4月30日であれば、資金繰り表の「支出」に計上するのは「4月」の「その他経費」欄になります。
あくまで「現金・預金が減った日」を基準にします。
ステップ4:「財務収入・支出」の記入方法
本業以外のお金の動き、主に「借入」に関する項目です。
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どこを見る?:預金通帳、「借入金の返済予定表」。
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どう記入する?:(記入例)
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4月5日に銀行から100万円の追加融資を受けた入金があった。
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4月28日に公庫への返済(元金5万円、利息1万円)が引き落とされた。
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→ 4月の「収入の部」の「財務収入(借入金)」に「1,000,000」と入力。
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→ 4月の「支出の部」の「財務支出(借入金返済)」に「50,000」(元金のみ)を入力。
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→ 4月の「支出の部」の「経常外支出(支払利息)」に「10,000」(利息のみ)を入力します。
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※テンプレートの多くは「元金返済」と「支払利息」を分けて記入するようになっています。
返済予定表を見て、正確に分けて転記してください。
過去実績の入力完了!「差引過不足」と「翌月繰越金」の確認
お疲れ様でした!これで1ヶ月分の実績入力が完了です。 最後に、入力した数字が合っているかを必ず「検算」します。
計算が合っているかの検算方法
エクセルのテンプレートは、通常、以下の計算式が自動で入っています。(※公庫の書式例)
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収入合計(B) と 支出合計(C) が自動計算されます。
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差引過不足(D) = 収入合計(B) - 支出合計(C)
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翌月繰越金(G) = 前月繰越金(A)+ 差引過不足(D)+経常外収支計(E)+財務収支計(F)
この計算結果(G)が、あなたの手元にある「預金通帳の月末残高+手元現金の月末残高」と一致しているかを確認してください。
【最重要】「翌月繰越金」と「実際の月末残高」が合わない場合
「計算結果(G)と、実際の月末の通帳残高が合わない…」 これは、初心者が必ずつまずくポイントです。
もし数字が一致しない場合、慌てずに以下の原因を探ってください。
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転記漏れ:通帳の入出金を一つ飛ばして入力していないか?
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入力ミス:桁(ゼロの数)を間違えて入力していないか?
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プライベートの入出金:事業主の個人的な生活費の引き出しや、プライベートなお金からの補填(事業主借)が混在していないか?
(これらも「事業主貸」「事業主借」などの項目で正確に入力する必要があります) -
最初の「前月繰越金」が間違っている:スタート地点がズレていると、全てがズレます。
この「翌月繰越金」と「実際の月末残高」が1円単位でピタリと合うまで、根気よく見直してください。
そして、1ヶ月目が合ったら、その「翌月繰越金」が次の月(5月)の「前月繰越金」となり、同じ作業を過去6ヶ月分など、必要な期間だけ繰り返していきます。
過去実績の入力でつまずいたら?税理士への相談
「どうしても数字が合わない…」
「預金通帳と試算表(会計ソフト)の数字が違いすぎて、どれを信じればいいか分からない」
「この入金は、どの勘定科目に入れればいいの?」
資金繰り表の「土台」である過去実績の入力は、非常に地味で根気のいる作業です。
しかし、この土台がグラついていると、その上に立てる「未来予測」も全く信頼性のないものになってしまいます。
もし、このステップで手が止まってしまい、何日も悩んでいるようであれば、それは専門家である税理士に相談するサインかもしれません。
私たちのような融資支援に強い税理士事務所であれば、あなたの通帳や会計データをお預かりし、どこで数字がズレているのか、公庫の担当者が納得する形に実績表を整えるサポートが可能です。
初期段階のズレを放置したまま進めてしまうことが、融資審査で最も危険なことです。
まとめ(第2回の振り返りと第3回への予告)
全4回シリーズの第2回は、日本政策金融公庫のエクセルテンプレートを使い、「過去の実績」を入力する具体的なステップを解説しました。
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過去の実績は、「未来予測の根拠」となり、「経営者の数字管理能力」を示す重要な土台です。
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「試算表の売上/経費」ではなく、「預金通帳の入出金」を基準(現金主義)に転記します。
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ステップ1:「前月繰越金(総残高)」を正確に入力します。
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ステップ2~4:「収入」「支出」を通帳から転記します。借入金返済は「元金」と「利息」を分けます。
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最後の検算:「翌月繰越金」が「実際の月末残高」と1円単位で一致するかを必ず確認します。
これで資金繰り表の「過去」が固まりました。
次回、【資金繰り表の作り方 第3回】では、いよいよこの実績を基にした「未来予測(計画)」の作成方法を解説します。
「売上予測」や「経費予測」を、担当者が納得するレベルで具体的に立てるコツをお伝えします。
起業スタートビジョンラボでは、創業したての方向けに、日本政策金融公庫をはじめとした創業融資はもちろんのこと、幅広くトータルサポートを承っており、融資についてのご相談からご提案までさせていただいております。
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