【資金繰り表の作り方 第1回】融資審査の鍵となる準備

日本政策金融公庫に提出する前の「準備」を税理士が解説

こんにちは!起業スタートビジョンラボです。

 

今まで事業融資に関するコラムを数多く掲載してきましたが、先日クライアント様とのお話の中で

「資金繰り表の作成の仕方を教えてもらったけど、だれかに教えてもらわないと一人で資金繰り表を一から作るのは難しいね」

とお言葉を頂きました。

 

当コラムをご覧になられている方も

  • 「日本政策金融公庫の融資審査で資金繰り表が必要になったけど、作り方が分からない…」
  • 「そもそも、資金繰り表を作るために、何から準備すればいいの?」
  • 「エクセルも苦手だし、数字を見ただけで頭が痛くなる…」

と、このように悩んでいませんか?

 

そこで、この記事から始まる全4回のシリーズでは【資金繰り表作成の初心者の方向け】に、「日本政策金融公庫の融資審査に通る資金繰り表の作り方」を、税理士がステップバイステップで徹底解説します。

記念すべき第1回は、作成に取り掛かる前の最も重要な「準備」についてです。

 

この記事を読めば、資金繰り表作成に必要な「物」と「情報」が明確になり、「何から手をつければいいか分からない」という不安が解消され、スムーズな作成スタートを切ることができます。

これから資金繰り表の作成にチャレンジするあなたは、ぜひ最後までじっくりお読みください!

 

 

なぜ日本政策金融公庫の審査で「資金繰り表」が必要不可欠なのか?

 

まず、「なぜ面倒な資金繰り表を作らなければならないのか」という理由から押さえておきましょう。

この目的を理解することが、精度の高い資料を作成する第一歩となります。

 

「損益計算書(利益)」「資金繰り表(現金)」別物

 

経営者の方がよく混同されるのが、「利益」と「現金(資金)」の違いです。

  • 損益計算書:一定期間(例:1年間)で、どれだけ「利益」または「損失」が出たかを示す書類です。

  • 資金繰り表:一定期間(例:1ヶ月ごと)で、「現金(預金含む)」がどれだけ増減し、手元にいくら残っているかを示す書類です。

重要なのは、利益が出ている(黒字)=お金が手元にある」とは限らないということです。

 

例えば、建設業などで1,000万円の売上が10月に発生しても、その入金が2ヶ月後の12月末になる契約だとします。

しかし、職人さんへの人件費や材料費の支払いは、11月末に発生します。

この場合、会計上(損益計算書)は10月に1,000万円の売上(黒字)が計上されますが、11月末の支払い時点では、手元に現金(キャッシュ)がありません。

損益計算書の上では黒字でも、手元の現金が支払いに追いつかなければ、会社は「黒字倒産(資金ショート)」してしまうのです。

 

融資担当者は「資金ショート」のリスクを一番恐れている

 

日本政策金融公庫の融資担当者が最も知りたいこと。

それは、「貸したお金を、将来にわたってきちんと返済し続けてくれるか?」という一点に尽きます。

 

どれだけ立派な事業計画があっても、どれだけ利益が出ていても、来月に支払いができなくなって「資金ショート」してしまえば、返済は止まってしまいます。

だからこそ、担当者は資金繰り表を見て、「この会社のお金の流れは本当に大丈夫か?」「融資したお金は適切に使われ、将来の返済原資は確保されるか?」を厳しくチェックするのです。

 

経営者自身が「会社のお金の流れ」を把握する最大の武器

 

資金繰り表は、融資審査のためだけに作るものではありません。

むしろ、経営者であるあなた自身にとって、会社の「お金の流れ(キャッシュ・フロー)」を正確に把握するための最強のツールです。

「いつ、いくらお金が入り、いつ、いくら出ていくのか」 「このままだと、いつ資金が足りなくなりそうか」

これを予測できるようになることで、漠然としたお金の不安から解放され、「いつまでに、いくら売上を立てる必要があるか」「いつ、融資を申し込むべきか」

といった具体的な経営判断ができるようになります。

 

 

資金繰り表の作成準備【ステップ1】まず揃えるべき「3つの物」

 

資金繰り表の重要性が分かったところで、早速「準備すべき物」を確認しましょう。

これらが手元にないと、作業を始めることすらできません。

 

1. 過去の入出金がわかる資料(預金通帳・現金出納帳)

 

資金繰り表は、「過去の実績」と「未来の予測」で構成されます。

まずは、過去のお金の流れを正確に把握するために、以下の資料を準備してください。

  • すべての事業用預金通帳(直近6ヶ月分~1年分):インターネットバンキングの場合は、入出金明細をCSVやPDFでダウンロードしておきましょう。

  • 現金出納帳(ある場合):小口現金の動きを記録している帳簿です。

  • プライベートの通帳(個人事業主の場合):事業用とプライベートの口座が未分化の場合、両方が必要になることもあります。

 

2. 過去の経営成績がわかる資料(試算表・確定申告書)

 

過去の「売上」や「経費」の全体像を把握するために、会計ソフトから出力できる「試算表(月次推移表)」や、税務署に提出した「確定申告書(決算書)」を手元に用意してください。

これらの書類と通帳の動きを照らし合わせることで、お金の流れの「根拠」が明確になります。

 

3. 資金繰り表の「型」(エクセル・テンプレート)

 

ゼロからエクセルで資金繰り表のフォーマットを作るのは非常に大変です。

初心者のうちは、日本政策金融公庫が公式に提供しているテンプレートや、使いやすいエクセルテンプレートを活用するのが賢明です。

日本政策金融公庫のホームページでは、創業融資用や既往の事業者用など、いくつかのフォーマットが用意されています。まずはそれをダウンロードしてみましょう。

(日本政策金融公庫の各種書式のダウンロードはこちらをクリック →  日本政策金融公庫各種書式ダウンロードページ )

(※本シリーズの第2回以降で、このテンプレートの具体的な使い方を解説していきます)

 

 

資金繰り表の作成準備【ステップ2】整理・把握すべき「お金の情報」

 

必要な「物」が揃ったら、次はそれらの資料から「情報」を抜き出し、整理していきます。

資金繰り表は、大きく分けて3つの「お金の活動」で構成されます。

 

「営業活動による資金(本業のお金)」の情報を整理する

 

これは、あなたの本業(商売)によるお金の増減です。資金繰り表の根幹となる部分です。

  • 売上の入金タイミング

    • 現金売上(飲食店など)は、いつ入金されますか?(即日か、翌日か)

    • 掛売上(BtoB取引など)は、回収サイト(締日と支払日)はどうなっていますか?(例:月末締め、翌々月10日払い)

    • 過去の通帳を見て、主要な取引先からの入金日をリストアップしましょう。

  • 仕入・経費の支払タイミング

    • 仕入の支払サイトはどうなっていますか?(例:月末締め、翌月末払い)

    • 毎月固定で出ていく経費(家賃、リース料、光熱費、通信費など)は、それぞれ何日に引き落とされていますか?

    • 人件費(給与、社会保険料、源泉所得税)の支払日はいつですか?

 

「財務活動による資金(借入・返済のお金)」の情報を整理する

 

これは、銀行や公庫からの借入や返済に関するお金の動きです。

  • 既存の借入金の返済予定

    • すでに他の金融機関や公庫から借入がある場合、「返済予定表」を準備してください。

    • 「毎月何日に、元金いくら、利息いくらを返済しているか」を正確に把握します。

  • 今回の融資希望額と返済計画

    • 今回、日本政策金融公庫にいくら融資を申し込みたいのか。

    • その返済は、いつから始まり、毎月いくらになる見込みか。(公庫の担当者と相談しながら決める部分でもあります)

 

「投資活動による資金(設備などのお金)」の情報を整理する

 

これは、将来の事業成長のために行う、比較的大きな支出(投資)に関するお金の動きです。

  • 近々予定している大きな支出

    • (例:新しい機械の導入、社用車の購入、オフィスの改装工事など)

    • 「いつ頃、いくらの支出が発生する予定か」を把握します。

    • これらの大きな支出を計画に含めないと、突然資金ショートする原因になります。

 

 

初心者が資金繰り表の準備で見落としがちな注意点

 

いざ作成を始めようとすると、初心者がつまずきやすい「準備段階での落とし穴」がいくつかあります。

 

注意点1:預金通帳の「残高」と「現金」を一致させる(重要)

 

資金繰り表のスタート地点は、「今、手元にいくら現金・預金があるか」という「繰越残高」です。

この数字がズレていると、その後の予測もすべてズレてしまいます。

まずは、準備したすべての預金通帳の残高と、手元の現金出納帳の残高を合計し、「現在の会社(事業)の総現金残高」を正確に確定させてください。

 

注意点2:「売上が立った日」と「現金が入る日」を混同しない

 

これは非常に多い間違いです。

例えば、1月31日に100万円の仕事を完了売上計上)しても、その入金が3月31日であれば、資金繰り表の「収入」に計上するのは「3月」です。

損益計算書は「1月」に売上100万円が計上されますが、資金繰り表は「現金が入ってきた日」を基準に作成します。

このズレを正確に把握することが、資金繰り管理の核心です。

 

注意点3:税金や社会保険料の支払予定を忘れない

 

毎月の経費以外にも、定期的または不定期に発生する大きな支出があります。

  • 税金:法人税、消費税、事業税、固定資産税など。

  • 社会保険料:年に一度の「労働保険料の年度更新」や、社会保険料の「算定基礎届」による金額変更など。

  • 賞与(ボーナス):夏と冬に支払う予定があれば、それも大きな支出です。

これらを見落としていると、支払月に「お金が足りない!」と慌てることになります。

決算書や過去の支払い履歴を見て、年間の支払いスケジュールを必ず確認しておきましょう。

 

 

準備が不安なら「税理士」に相談するメリット

 

ここまで読んで、「準備するものが多すぎる…」「自分一人で正確に情報を整理できる自信がない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

日本政策金融公庫の融資審査において、資金繰り表は非常に重要な書類です。

不備のある書類を提出して審査に落ちてしまうリスクを考えれば、作成の段階から税理士などの専門家に相談するメリットは非常に大きいです。

 

メリット1:必要な資料の抜け漏れを正確にチェックできる

 

私たちのような創業支援や融資サポートに強い税理士事務所であれば、「公庫の審査で何が必要か」を熟知しています。

あなたが準備した資料の抜け漏れをチェックし、不足している情報を的確にアドバイスすることができます。

 

メリット2:公庫の審査担当者が納得する「予測」の立て方を助言できる

 

資金繰り表の作成で最も難しいのが「未来の予測」です。

税理士は、過去の実績や業界の平均値に基づき、融資担当者が「この計画なら実現可能だ」と納得しやすい、客観的で現実的な予測計画の作成をサポートします。

 

メリット3:融資後も継続的な資金繰り管理をサポートできる

 

資金繰り表は、融資を通して終わりではありません。

融資実行後も、計画通りに経営ができているか、資金繰りに問題は発生していないかを継続的にチェックしていく必要があります。

税理士と顧問契約を結ぶことで、経営のパートナーとして長期的な資金繰りの安定をサポートできます。

 

 

まとめ(第1回の振り返りと第2回への予告)

 

全4回シリーズの第1回は、「資金繰り表を作成するための準備」について解説しました。

  • 資金繰り表は、公庫の審査担当者に「返済能力」を示すため、そして経営者自身が「お金の流れ」を把握するために不可欠です。

  • 「利益」と「現金」は別物であり、「黒字倒産」のリスクを回避するために資金繰り表が必要です。

  • 準備すべき「物」は、「預金通帳」「試算表・決算書」「テンプレート」の3つです。

  • 整理すべき「情報」は、「営業活動(本業)」「財務活動(借入)」「投資活動(設備)」の3つのお金の流れです。

  • 特に「売上の入金日」と「売上計上日」の違い、税金などの「大きな支出」の見落としに注意が必要です。

まずは今回ご紹介した「物」と「情報」を漏れなく準備することから始めてみてください。

 

次回、【資金繰り表の作り方 第2回】では、いよいよエクセルのテンプレートを使い、準備した資料を基に「過去の実績」を入力していく具体的な方法を解説します。

名古屋起業スタートビジョンラボでは、創業したての方向けに、日本政策金融公庫をはじめとした創業融資はもちろんのこと、幅広くトータルサポートを承っており、融資についてのご相談からご提案までさせていただいております。

気になる方は是非、お気軽にご連絡下さい。

 

 

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