【後編】黒字倒産を回避せよ!キャッシュフロー改善方法
税理士が教えるキャッシュフロー改善の実践テクニック
こんにちは!起業スタートビジョンラボです。
全2回でお届けする「利益とキャッシュフロー」特集、今回は【後編】です。
【前編】では、「利益」と手元のお金である「キャッシュフロー」がなぜズレるのか、その5つの原因を解説しました。
まだ前編をご覧になられていない方は、是非こちらもご覧ください:【前編】 → 利益は出ているのにお金がない原因は何?
今回はその知識を元に、なぜ黒字倒産が起きるのかという危険性と、会社の血液であるキャッシュフローを改善するための具体的な方法を解説します。
この記事を読めば、資金繰りの不安を解消し、力強く成長する会社を作るための具体的なヒントが手に入ります。
前編に引き続き、会社の財務体質を盤石にしたいあなたは、ぜひ最後までじっくりお読みください!
【危険信号】キャッシュフローを無視する経営の末路「黒字倒産」とは
利益とキャッシュフローの違いを理解しないままでいると、どのような危険があるのでしょうか。その最たる例が「黒字倒産」です。
Q:なぜ「黒字倒産」は起きてしまうのか?
黒字倒産とは、損益計算書上では利益が出ているにもかかわらず、手元の現金が尽きてしまう状態のことです。
これにより、仕入先への支払いや従業員への給与支払い・借入金の返済などが出来なくなり、事業継続不可の状態に陥ります。
例えば、大型案件を受注して大きな売上(利益)が立ったとします。
しかし、入金が数ヶ月先で、それまでの間に外注費や材料費などの支払いが先に来てしまったらどうなるでしょうか。
手持ちの現金がなければ支払いはできず、会社の信用は失墜し、倒産に至ってしまうのです。
これが黒字倒産の典型的なパターンです。
あなたの会社は大丈夫?簡単なキャッシュフローチェック
難しいキャッシュフロー計算書(C/F)をすぐに作るのは大変かもしれません。
まずは、「会計上の利益」と「手元の現金」がどれだけズレているか、ごく簡単なチェックをしてみましょう。
お手元の決算書(前期・当期)をご用意いただき、以下の計算をしてみてください。
- 【前期末の現預金残高】 + 【当期の税引後利益】 - 【当期末の現預金残高】
さて、この計算式の結果はプラス(+)になりましたか? マイナス(-)になりましたか?
・計算結果が「プラス(+)」になった場合
もし計算結果がプラス(例:+2万円)になった場合。
それは、「会計上の利益(例:10万円)よりも、実際に手元で増えた現預金(例:8万円)の方が少なかった」ということを示しています。
(計算例: 前期末の現預金残高(100万) + 当期の税引後利益(10万) - 当期末の現預金残高(108万) = +2万円)
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会計上の利益: +10万円
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実際の現金の増加額: +8万円
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ズレ(差額): +2万円
この「ズレ(+2万円)」こそが、利益とは別で「現金が減った(あるいは、入ってくるのが遅れた)要因」です。
主な原因としては、
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運転資金(売掛金・在庫)の増加(例:2万円分、売掛金が増えた)
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借入金の返済(例:2万円、借入元本を返済した)
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設備投資(例:2万円、備品を現金で買った) などが考えられます。
このズレが大きくなり、利益はたくさん出ているのに手元の現預金が全く増えない、あるいは逆に減ってしまうような状態を、一般的に「勘定合って銭足らず」と呼び、非常に危険なサインとなります。
・計算結果が「マイナス(-)」や「ゼロ」になった場合
逆に、計算結果がマイナス(例:-3万円)になった場合はどうでしょうか。
(計算例: 前期末の現預金残高(100万) + 当期の税引後利益(10万) - 当期末の現預金残高(113万) = ー3万円)
これは、「会計上の利益(例:10万円)よりも、実際に手元で増えた現預金(例:13万円)の方が多かった」ことを示します。
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会計上の利益: +10万円
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実際の現金の増加額: +13万円
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ズレ(差額): -3万円
「利益以上に現金が増える」主な理由としては、
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減価償却費(※現金が出ていかない費用)
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借入金の増加(例:利益10万とは別に、銀行から3万円借りた)
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運転資金(買掛金・未払金)の増加(例:仕入代金3万円の支払いを翌月に回した) などが考えられます。
一度、ご自身の決算書で確認してみてご自身の会社のキャッシュフローは健全かどうかチェックしてみてください。
会社の血液をサラサラに!キャッシュフローを改善する3つのヒント
では、どうすればキャッシュフローを健全に保てるのでしょうか。
今日からできる改善のヒントを3つご紹介します。
ヒント1:お金の「未来」を予測する(資金繰り表の作成)
まず、自社のお金の流れを正確に把握することが第一歩です。そのために不可欠なのが「資金繰り表」の作成です。
最低でも3ヶ月〜半年先までの入出金予定を一覧にすることで、「いつ、いくら資金が不足しそうか」を事前に予測できます。
予測さえできれば、「金融機関に融資を申し込む」「経費を圧縮する」といった対策を、慌てる前に打つことが可能です。
ヒント2:聖域なき「経費(コスト)」を削減する
一番は『入金を早く、支払いを遅く』が理想ですが、取引先との交渉は力関係で現実的ではありません。
それよりも、自社で100%コントロール可能な「経費(コスト)」に、厳しく目を向けるべきです。
家賃、通信費、水道光熱費、接待交際費、不要なサブスクリプション費用など、毎月「固定」で出ていくお金に無駄がないか、聖域を設けずに見直しましょう。
たとえ月1万円の削減でも、年間で12万円のキャッシュが会社に残り、そのまま利益(会社の体力)となります。
ヒント3:「在庫」と「設備投資」のルールを決める
キャッシュフローを悪化させる2大要因が「過剰在庫」と「無計画な設備投資」です。
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在庫 :過剰な在庫は、キャッシュを生まない「寝ているお金」です。
「〇ヶ月分以上は発注しない」「定期的に現金化する」など、社内の明確なルールを決め、在庫管理を徹底しましょう。 -
設備投資:大きな設備投資は、多額のキャッシュアウトを伴います。
「本当に今必要なのか?」はもちろん、「その投資が、将来いくらのキャッシュイン(利益)を生むのか?」を厳密にシミュレーションする姿勢が重要です。
資金繰りの不安は税理士に相談しよう
ここまでキャッシュフローの重要性について解説してきましたが、「自社だけで管理するのは難しい」と感じる方も多いはずです。
そんな時こそ、私たち税理士のような専門家を頼ってください。
専門家と作る「資金繰り表」で未来を予測
私たちは、お客様の事業内容や取引状況に合わせて、精度の高い「資金繰り表」の作成をサポートします。
これにより、漠然としたお金の不安が解消され、経営者は安心して事業拡大に集中できます。
資金繰りの状況を正確に把握することは、次の打ち手を考える上での羅針盤となります。
融資や資金調達のアドバイスも可能
資金繰り表を作成し、資金が不足しそうだと分かった場合でも、私たちは金融機関への融資申込のサポートが可能です。
説得力のある事業計画書や資金繰り表を準備し、面談対策まで行うことで、資金調達の成功確率を大きく高めることができます。
まとめ
全2回にわたり、「利益」と「キャッシュフロー」について解説しました。
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【前編】「利益」と「キャッシュフロー」は別物。会計上のタイムラグやルールによりズレが生じる。
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【後編】そのズレを放置すると「黒字倒産」のリスクがある。資金繰り表で現状を把握し、改善策を実行することが重要。
「利益」を追い求めることはもちろん重要ですが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に「キャッシュフロー」を管理することが、会社を継続させ、成長させていくためには不可欠です。
起業スタートビジョンラボでは、創業したての方向けに、日本政策金融公庫をはじめとした創業融資はもちろんのこと、幅広くトータルサポートを承っており、融資についてのご相談からご提案までさせていただいております。気になる方は是非、お気軽にご連絡下さい。

