【年末の創業融資】「年内の融資実行」は本当に得?
日本政策金融公庫vs民間金融機関、税理士(と元金融機関職員)が“ホンネ”を交えて解説
こんにちは!起業スタートビジョンラボです。12月に入り、街も慌ただしくなってきました。
この記事を読んでいる皆様も、「年内に資金調達をスッキリ終えて、年明けからロケットスタートを切りたい!」と、創業融資の準備でラストスパートをかけている頃ではないでしょうか?
そのお気持ち、非常に良く分かります。 でも、その「年内に実行したい」という焦り、少しだけ立ち止まって考えてみませんか。
その焦りが、資金調達をかえって不利にしている可能性もあるのです。
いつもは「専門家」として冷静に解説していますが、今日は「年末」という特殊な時期。
“所々で”、我々専門家や元金融機関担当者の「ホンネ(本音)」も交えながら、そのウラ事情を解説していきます。
年末融資の「ウラ事情」や、金融機関との「心理戦」に興味がある方は、ぜひ最後までじっくりお読みください!
【ホンネ①】例年、年末の日本政策金融公庫(JFC)は「激混み」です
まず、創業融資の王道である「日本政策金融公庫」の年末事情から。
これはハッキリ申し上げますが、12月の日本政策金融公庫は、一年で最も混雑する時期の一つです。
なぜなら、「年内にケリをつけたい」と考えるのは、このコラムをご覧になられている皆様だけではないからです。
全国の創業者、そして既存の事業者(創業融資だけでなく、追加融資や年末の資金繰りのため)が一斉に公庫に駆け込むのが、この12月なのです。
審査担当者も「人間」。キャパオーバーです。
公庫の審査担当者も人間です。当然、一日に処理できる案件数には限界があります。
そこに、普段の1.5倍、2倍の案件が雪崩れ込んできたら、どうなるでしょうか?
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審査期間がいつもより延びる
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面談の日程がなかなか決まらない
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一つ一つの案件をじっくり見る余裕が(物理的に)減る
こんな状態になりがちです。
そんな激混み状態のところに、「年内に!」と焦って、準備不足の事業計画書を提出したらどうなるでしょう。
公庫ではありませんが、年末の融資担当者の本音について、当事務所の職員が当時金融機関の融資役席として在籍していた時の経験談を簡潔に記載します。
【担当者のホンネ(当事務所職員の融資役席時代の内情)】
「うわ、また焦ってる話の案件が渉外から回ってきたな…。新規だけと売上予測の根拠と事業展望の骨子が出来ていないし、添付資料も中途半端だな」
「こっちは別件で完璧な書類を待ってる優良案件で手一杯なのに…この案件の稟議、今から作れるか?」
「(担当へ)はいこれ、不備修正。年内実行? 不備修正を今できないと時間的にこれを上に通すのは厳しいよ…申し訳ないけど、今からだと年明け回しになるな」
…なんて事が実際にあったそうです。
「どうしても年内に!」という焦りが、かえって「準備不足」という致命的な弱点を生み出し、担当者に後回しにされる事となる事例ですね。
公庫に申し込むなら、中途半端な状態で「年内実行」を目指すのは良い手とは言えません。
それよりも、年末年始にじっくり計画を練り直し、ライバルが少ない「年明け1月中旬」に完璧な事業計画書で申請した方が、結果的に審査通過率も高く、実行までのスピードも速い可能性が高いです。
【ホンネ②】民間銀行(信金)の担当者は「数字(ノルマ)」に追われている
さて、公庫が「激混み」の一方、民間の金融機関(銀行や信用金庫)の担当者は、まったく別の理由でソワソワしています。
それが、各担支店別・当者別の「目標数字」です。(今は「ノルマ」とは言わず、個人目標等と聞いていますが、実際のところはノルマですね。)
民間金融機関の支店や担当者には、「今月(12月)末までに融資実行額〇〇円!」「今期(3月末)までに〇〇件新規先の融資実行必達!」といった、明確な数字目標が課せられています。
12月末は「年内実績」が欲しい!
年末融資の準備が出来ている担当者や、実績が作られている優良店は、11月末までに融資案件をまとめて、12月に投入する準備を完了しています。
但し、全ての担当者や店舗がそのように準備万端とは限りません。
特に12月末は、「年内キリよく実績をまとめたい」という支店長や担当者の心理が働きます。 (※もちろん、最大の山場は3月末の「年度末」ですが、12月も中間目標として重要な時期です)
つまり、公庫とは逆に、「どこか融資できる先はないか?」「年内に実行できる案件はないか?」と、担当者がアンテナを張っている時期でもあります。
この心理戦、利用しない手はありません
ここで「心理戦」が発生します。
あなたがもし、
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(創業計画書だけでなく)既に事業を始めている
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ある程度の売上実績(通帳の履歴)がある
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公庫だけでなく、民間の保証協会付融資も視野に入れている
という「準備万全」の状況なら、話は別です。
公庫の激混みを横目に、あえて民間の銀行や信金の担当者に「年明けから事業を加速させたいので、年内に融資を検討してもらえませんか?」と相談してみたとしましょう。
【銀行担当者のホンネ(当事務所職員の渉外・融資担当時代)】
「これはきた! 計画書もしっかりしてるし、過去の売上実績(エビデンス)もある!これなら新規案件として本部に稟議を出しても通る可能性が高い!」
「書類も揃っているし、融資役席と支店長に話を通しやすい。これを年内に実行できれば年内実績になるな…!分かりました!スピード審査で頑張ります!」
…なんて展開も、十分にあり得るのが、この年末の「民間金融機関」なんです。
ただし、これは「準備が万全な人」に限った話です。
公庫だろうと銀行だろうと、準備不足の計画書は「お断り」されるだけ。ここは勘違いしてはいけません。
【専門家から見たホンネ③】年末に相談に来る「惜しい人」と「スゴイ人」
この時期、私たち税理士事務所にも、創業者の方が「年内に!」と駆け込みで相談に来られます。
その時、私たちが(口には絶対出しませんが)思う「ホンネ」を少しだけ。
【ホンネ①】「これは惜しい!」と思う人・案件
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特徴:熱意もアイデアも最高。でも数字(特に自己資金)の準備がゼロ。
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心の声:「そのアイデア、本当に面白いですね! …ただ、自己資金はゼロですか…。通帳も今作ったばかり…。この状態だと公庫も銀行も高確率で厳しいな…。半年前から『通帳に貯金する』という行動に向けていてくれれば、融資を通せたかもしれないのに…」
熱意は「行動」で示してこそ。融資における最大の行動とは「自己資金を貯めること」と「事業計画を数字に落とし込むこと」です。
【ホンネ②】「この人、スゴイな…」と思う人
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特徴:申請を「年明け」に見据え、年末のこの時期に「計画書の壁打ち(レビュー)」に相談に来る人。
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心の声:「もう計画書は9割完成している!しかも『年内は混むと思うので、年明けに万全の体制で臨みたい。だからプロの目で弱点を洗い出してほしい』か...。『焦らない計画性』と『客観性を求める姿勢』こそが、経営者としてレベルの高さを示しているな。この人は融資が通る可能性が非常に高いだろう。」
結論:融資申込は「焦らない」が勝ちです。
まとめ
今日は「年末の融資」というテーマで、普段は表に出すことのない「ホンネ」も交えて解説しました。
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焦る創業者:「年内に借りたい!急げ!」
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公庫のホンネ:「年末は激混み。完成度の低い書類は後回しにせざるを得ない」
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民間銀行のホンネ:「ノルマの達成が必達!良い案件なら年内に実行したい!」
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税理士のホンネ:「焦って準備不足で落ちるより、年明けに完璧な準備で通る方が100倍マシ!」
結局、どの金融機関を選ぶにせよ、「準備不足」と「焦り」が最大の敵だということです。
もし、皆様が「年内に融資実行」にこだわって焦っているなら、一度立ち止まってください。
その計画書、本当に完璧ですか? その焦りのせいで、本来通るはずの融資を、自らダメにしていませんか?
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