【前編】利益は出ているのにお金がない原因は何?

 

税理士が教えるキャッシュフローの基本と"5つのズレ"

こんにちは!起業スタートビジョンラボです。

「決算書上は利益が出ているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない…」

「月末の支払いを考えると不安になる…」

そんな悩みを抱えていませんか?

その原因は、「利益」と「キャッシュフロー」の違いを混同していることにあるかもしれません。

 

この記事は、会社の資金繰りの基本を解説する全2回のコラムの【前編】です。

今回は、多くの経営者が混同しがちな「利益」と「キャッシュフロー」の根本的な違いと、なぜその違いが生まれるのかについて、分かりやすく解説します。

 

この記事を読めば、「利益があるのにお金がない」という状態の謎が解け、健全な経営の第一歩を踏み出すことができます。

会社の資金繰りに少しでも不安を感じている経営者のあなたは、ぜひ最後までじっくりお読みください!

 

 

すべての経営者が知るべき「利益」と「キャッシュフロー」の基本

 

まず、似ているようで全く異なる「利益」「キャッシュフロー」の基本的な定義から確認しましょう。

この2つを正しく区別することが、健全な会社経営のスタートラインです。

 

●「利益」とは?~事業の成績表~

利益とは、一言でいえば「事業活動の成績」です。

会計期間(通常は1年間)において、会社がどれだけ儲けたかを示す指標で、主に損益計算書(P/L)で確認できます。

 

【利益 】= 収益 - 費用

 

重要なのは、この計算は「取引が発生した時点(発生主義)」で行われるという点です。

実際にお金が動いたかどうかは関係ありません。

例えば、商品を掛けで販売した場合、お金がまだ入金されていなくても、会計上は「売上(収益)」として計上されるのです。

 

●「キャッシュフロー」とは?~会社の血液~

キャッシュフローとは、文字通り「現金(キャッシュ)の流れ(フロー)」のことです。

一定期間内に、会社にどれだけの現金が入り(キャッシュイン)、どれだけ出ていったか(キャッシュアウト)を示す指標です。

 

【キャッシュフロー 】= 期間中の現金収入 - 期間中の現金支出

 

キャッシュフローは、実際のお金の動きそのもの表します。

会社を人体に例えるなら、キャッシュ(現金)は血液です。

利益という筋肉がどれだけあっても、血液が流れなくなれば会社は生き残れません。

 


 

なぜズレる?利益とキャッシュフローが一致しない5つの原因

 

「利益 ≠ キャッシュフロー」となる最大の理由は、会計上のルールと現実のお金の動きにタイムラグがあるためです。

ここではその代表的な原因を5つご紹介します。

 

原因1:売上と入金のズレ(売掛金)

 

多くの企業間取引では、商品を提供してから代金が後日支払われる「掛け取引」が一般的です。

例えば、100万円の商品を販売した場合、会計上は即座に100万円の「売上(利益のプラス要因)」が計上されます。

 

しかし、入金が2ヶ月後であれば、その2ヶ月間は手元のキャッシュは1円も増えません。

この未回収の代金を売掛金」と呼びます。

 

原因2:仕入と支払いのズレ(買掛金・在庫)

 

原因1とは逆に、仕入れた時点と支払い時点のズレもあります。商品を掛けで仕入れた場合、代金の支払いは後日になります。

この未払いの代金が「買掛金」です。

 

また、商品を仕入れても、それが売れるまでは「在庫」として会社に保管されます。

仕入れ代金としてキャッシュは出ていきましたが、売上が立つ(利益になる)のは実際に売れてからです。

 

原因3:お金は出ないけど費用になるもの(減価償却費)

 

高額な機械や車などを購入した場合、その購入費用は一度に費用計上するのではなく、法律で定められた年数(耐用年数)にわたって分割して費用計上します。

この会計処理を減価償却といい、その費用を「減価償却費」と呼びます。

減価償却費は「実際のお金の支出を伴わない費用」であり、利益を押し下げる一方でキャッシュは減らない、というズレを生みます。

 

原因4:お金は出るけど費用にならないもの(借入金の返済)

 

銀行などから融資を受けた際の借入金の元本返済は、キャッシュの支出は伴いますが、会計上の「費用」にはなりません(費用になるのは利息部分のみです)。

例えば、毎月20万円を返済している場合、手元のキャッシュは20万円減りますが、利益計算には影響しません。

これも利益は出ているのに手元のキャッシュが減っていく大きな要因の一つです。

 

原因5:利益が出てから支払うもの(税金)

 

法人税や事業税などの「税金」は、利益が確定した後に納付します。

決算で「利益が出た」と分かってから、後日その利益に応じた税金をキャッシュで支払うため、ここでも大きなタイムラグが発生します。

なお、納税資金を確保しておかないと資金繰りが一気に悪化する原因となります。

 

 

まとめ【前編】

 

今回は【前編】として、「利益」と「キャッシュフロー」の基本的な違いと、両者がズレてしまう5つの主な原因について解説しました。

 

  • 「利益」は会計上の儲け、「キャッシュフロー」は現実のお金の流れであり、両者は一致しない。

  • 「売掛金」「在庫」「減価償却費」「借入金返済」「税金」などが、ズレを生む代表的な要因。

 

まずは、なぜ利益と手元のお金が一致しないのか、その構造を理解することが重要です。

 

続く【後編】では、このズレを放置することで起こる「黒字倒産」の恐怖と、そうならないために会社のキャッシュフローを改善する具体的な実践方法について詳しく解説します。

ぜひそちらも合わせてご覧ください。

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