「連帯保証人なし」の良し悪しについて
【経営者のための金融リテラシー】
経営者が知っておくべき“金利”と“審査”のトレードオフ
こんにちは!起業スタートビジョンラボです。
先日のコラムで、国の方針や法改正により「経営者保証(連帯保証)なし」の融資が主流になりつつあるとお伝えしました。
「個人の責任を問われないなんて、時代が変わった」と感じる方も多いでしょう。
しかし、物事には必ず「表」と「裏」があります。
今回は、経営者保証なし融資を選択する際、経営者が知っておかなければならない「金利の上昇」と「審査の厳格化」という点について、元金融機関職員の視点を交えながら解説します。
少々厳しい内容となりますが、経営者の方は是非ともご覧頂きたい内容ですので、最後までお付き合いください。
1. 「保証なし」を選択すれば、金利は上がるのが当然
まず、経営者の皆様に深く理解していただきたいのが、金融における「リスクとリターンの関係」です。
金融機関にとって、経営者の連帯保証は融資回収のための「最後の砦(とりで)」としての機能を持っていました。
万が一会社が倒れても、社長個人の資産から回収できる可能性があるからこそ、金融機関は貸し倒れリスクを抑えることができていたのです。
その「砦」を取り払うわけですから、金融機関側から見れば当然、貸し倒れリスクは高まります。
ビジネスの世界において、リスクが高まれば、その分価格(金利)が上がるのは当然の理屈です。
【借り手の心構え】
「保証人は外してほしい。でも金利は今まで通りの低金利で頼む。」
これは金融の仕組み上、少々虫が良すぎる話と言わざるを得ません。
「個人の責任(保証)を免除してもらう代わりに、上乗せ金利(保証料相当)を支払う」(と言っても既存金利に+0.2%くらいですが)
このトレードオフ(交換条件)を理解し、提示された金利上昇を「対価」として受け入れる姿勢が必要です。
2. 「保証人がいたから借りられていた」という現実
次に知っておくべきは、「保証なし=借りにくくなる会社が出てくる」という点です。
これまでの融資実務では、業績が少し悪かったり、赤字ギリギリの会社であっても
- 「社長に個人の資産背景があるから」
- 「社長が覚悟を持って連帯保証人になってくれるから」
という理由で、連帯保証人を「信用補完(足りない信用を補うもの)」として扱い、審査を通していた案件があったのも事実です。
しかし、「保証人を取らない」ことが常態化すると、この「助け舟」が出せなくなります。
【これからの審査の変化】
- 今まで: 「業績は悪いけど、社長の保証(信用補完)があるから貸そう」
- これから: 「保証がないなら、純粋に会社の業績だけで判断するしかない。業績が基準に満たない場合は融資できない」
つまり、業績が芳しくない企業にとっては、金利以前の問題として「借入の土俵に上がれなくなる(門前払いされる)」リスクが高まることも知っておく必要があります。
3. 金融機関は「保全」のためだけに保証を取っていたわけではない
世間では、「銀行(金融機関)は自分たちの保全のためだけに、何でもかんでも保証人を求めてきた」と批判されることがあります。
確かに「とりあえず慣例で保証人徴求」というケースがあったことは否定できないでしょう。
しかし、有力な保証人がいないために通せなかった案件もあれば、逆に「保証人」というカードを切ることで、本来なら法人単体では融資できないリスクの高い案件を通し、企業の挑戦を後押ししてきた側面も間違いなくあります。
「保証人制度」は、単なる銀行の保全ツールではなく、「信用力が育ち切っていない中小企業が、資金調達をするための命綱」の側面もあったのです。
4. 「経営者から保証人になる言う申し出」という選択肢が残る理由
ここで、「経営者側から『保証人になります』と申し出れば、今まで通り借りられるのか?」という点について触れておきます。
制度上、経営者の自発的な意思による「連帯保証の申し出」は認められています。(とはいえ現状の流れとは逆行するものであることは理解しておく必要があります)
こう言うと「銀行(金融機関)が従来通り、連帯保証人徴求の抜け道に使おうとしている」と見る方も見えるかもしれませんが、実務的な視点で見れば、これは「金融機関と経営者双方の現実的な妥協点」でもあります。
【金融機関の本音】
金融機関も商売ですから、本音では「融資したい」のが実情です。
しかし、保証人なしではリスクが高すぎて社内の審査を通せない案件も多々あります。
そこで「社長が保証人になってくれるならその信用を担保にして、なんとか融資を通せる(金利も抑えられる)」というケースが生まれます。
【経営者のメリット】
経営者側も、「保証人になる」というカードを切ることで審査のスピードを早めたり、金利を安くしたり本来なら借りられない資金を調達できるメリットがあります。
つまり、自発的な申し出は「リスク(保証)と引き換えに、融資のハードルを下げる」ための有効なオプションとして機能している側面があるのです。
5. 「セーフティネット」喪失の代償:審査の厳格化は避けられない
ただ、金融機関からすれば連帯保証人は「万一の時の回収源」であり、融資判断における「セーフティネット(安全装置)」でした。
この切り札が1枚なくなるわけですから、金融機関は自己防衛のために入り口の審査を厳しくせざるを得ません。
【今後の融資審査に関する流れについて】
- 今までとは違い保証人(安全装置)が取れなくなる。
- 金融機関は「事業そのものの安全性」を今まで以上に厳しくチェックする。
(懸念があれば、保全が図れないため「否決」にせざるを得ない) - 新規融資・既存融資のハードルが上がる。
- 企業の資金調達が難航し、事業計画の縮小や修正を余儀なくされる。
このような流れになる可能性も否定できません。
金融機関が預金者のお金を預かる機関として保全のない貸付を厳格化するのは「業務上の必然」と言えるでしょう。
まとめ:自由には「責任」と「実力」が伴う
「経営者保証なし」への流れは、経営者個人を守るという意味で、間違いなく良いことです。
しかし、それは同時に、「保証人に頼って融資を受けていた」過去の終わりを意味します。
- 保証人あり: 社長の信用でカバーし、柔軟に融資を受けられる(ハードル低)。
- 保証人なし: 会社の裸の実力が問われ、シビアな選別を受ける(ハードル高)。
これからは、「保証人が取られなくてラッキー」と喜ぶだけでなく、 「保証人無しでも金融機関が『貸したい』と判断するだけの強い事業計画と財務内容を作れるか?」 という、経営者としての真の実力が試される時代になります。
「あえて保証人を入れて、事業スピードを優先する」 「保証人を外して、厳しい審査に真正面から挑む」
どちらの選択が正解ということはありません。自社のフェーズと実力を見極め、冷静に判断することが求められます。
迷われた際は、ぜひ起業スタートビジョンラボにご相談ください。
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