【追加融資ガイド⑤】公庫と銀行(保証協会)どっちが先?
「借り増し」相談先の選び方と、税理士が教える金融機関との付き合い方
こんにちは!起業スタートビジョンラボです。
これまでのシリーズで、「賢い借入」のマインドセット、審査のポイント、そして赤字でも諦めない「事業改善計画書」の作り方まで解説してきました。
計画書という「武器」の準備が整った今、あなたが次に直面する悩みは、「この計画書を、一体“どこ”に持って行くべきか?」という、相談先の問題です。
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「1回目(創業時)は日本政策金融公庫にお世話になった。2回目も公庫に頼むのが筋だろうか?」
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「いや、売上の入金口座として使っている地元の銀行や信用金庫に、そろそろ相談すべきか?」
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「公庫と銀行、どっちが審査に通りやすいんだろう?」
この記事では、追加融資(借り増し)の相談先として、「日本政策金融公庫」と「民間金融機関(銀行・信用金庫)」をどのように使い分けるべきか。
そのメリット・デメリットと、事業を長期的に成長させるための「賢い相談の順番」について、税理士の視点で徹底解説します。
相談先の候補は「公庫」と「民間(保証協会)」
まず、追加融資の相談先として、あなたの前には大きく分けて2つの選択肢があります。
今回のケースでは「創業融資」を「日本政策金融公庫」で受けているという前提でお話させていただきます。
1. 日本政策金融公庫(JFC)
創業時に多くの事業者が一番最初にお世話になることが多い、政府系の金融機関です。
小規模事業者や創業者の支援をミッションとしており、あなたの「1回目の返済実績」を直接把握している、最も身近な相談先の一つです。
2. 民間金融機関(銀行・信用金庫)+ 信用保証協会
あなたの地元の銀行、信用金庫、信用組合などです。
多くの場合、ここで「メインバンク(売上入金や経費支払のメイン口座)」を開設しているかと思います。
民間金融機関が小規模事業者に融資(特に創業期〜成長期)を行う場合、その多くが「信用保証協会」の保証を付けた融資(=「保証協会付融資」と呼ばれます)となります。
これは、万が一あなたが返済できなくなった場合、信用保証協会が皆さんに代わり、銀行にお金を肩代わりする制度です。
審査は「銀行」と「信用保証協会」の2段階で行われるため、公庫に比べると少しハードルが高いと感じるかもしれません。
公庫と銀行(保証協会)、それぞれのメリット・デメリット
では、この2つの選択肢を、追加融資の際にはどう評価すればよいでしょうか。
日本政策金融公庫(JFC)に相談するケース
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メリット:
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1回目の返済実績(遅延がないか等)を直接把握しているため、話が早い。
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民間金融機関に比べ、赤字決算など(第3回参照)の厳しい状況でも、「事業改善計画書」(第4回参照)の内容次第で、粘り強く支援を検討してくれる傾向がある。
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「保証料」がかからないため、金利以外のコストが低い。
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デメリット:
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融資残高が積み上がってくると、公庫だけの追加融資では枠(限度額)が厳しくなることがある。
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公庫とだけの付き合いでは、「民間金融機関との取引実績」が育たない。(これが最大のデメリットです)
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民間金融機関(保証協会)に相談するケース
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メリット:
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あなたのメインバンク(日々の入出金)としての「取引実績」を評価してもらえる。
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ここで融資実績を作る(=借りて、返す)ことが、将来、保証協会の保証なしで借りられる「プロパー融資」への第一歩となる。(※これが経営者としての「ゴール」の一つです)
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複数の民間金融機関と取引できれば、資金調達の「窓口」が増え、リスク分散になる。
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デメリット:
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公庫に比べ、直近の「決算書」の数字(黒字か赤字か)をシビアに見る傾向がある。
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審査が2段階(銀行・保証協会)になるため、手間と時間がかかることがある。
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融資実行時に、信用保証協会へ別途「保証料」を支払う必要がある。
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税理士が推奨する「賢い相談の順番」
「公庫にも銀行にも、一長一短あるのは分かった。で、結局どっちが先?」 という疑問にお答えします。
これは、あなたの会社の「財務戦略」として、非常に重要な判断です。 私たちが推奨する「賢い相談の順番」は、以下の通りです。
ステップ1(1回目):創業融資
まずは「日本政策金融公庫」から借りる。(※多くの方が実行済み) →実績ゼロでも事業計画書で評価してくれる、創業者の強い味方です。
ステップ2(今回=2回目):追加融資
まず「民間金融機関(保証協会)」に相談してみる。
「えっ、ハードルが高そうな銀行から?」と思うかもしれません。
ですが、あなたの事業が成長フェーズにある今こそ、「金融機関との取引チャネル(窓口)を増やす」ことが、公庫から借り続けること以上に重要だからです。
公庫という「1本足」で立つのではなく、公庫と民間銀行という「2本足」で立てるようにする。これが、将来の安定経営(リスク分散)に直結します。
【相談時の“模範トーク”】
メインバンクの担当者に、こう伝えてみてください。
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「創業融資は公庫さんにお世話になりましたが、御行をメインバンクとして使わせていただいており、今後は御行とも本格的なお付き合いを始めたいと考えています。」
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「つきましては、保証協会付融資で、今回の追加融資をご相談できませんでしょうか?」
これは、銀行の担当者にとって非常に嬉しい申し出です。
「公庫に取られていた顧客が、ウチをメインとして育てようとしてくれている」と感じるからです。
ステップ3(2回目で銀行がNGだった場合)
ステップ2で民間金融機関に断られた(例:「まだ決算が赤字なので…」「もう少し様子を見ましょう」など)場合、「日本政策金融公庫」に相談します。
公庫は、1回目の返済実績を評価してくれます。
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「民間銀行にも相談しましたが、1期目が赤字だったため難しく…。しかし、この事業改善計画書(第4回参照)の通り、黒字化は目前です。」
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「公庫さん、もう一度支援していただけませんか?」
という流れであれば、公庫の担当者も「ウチが支えよう」と、前向きに検討してくれる可能性が高まります。
なぜ「複数の窓口(チャネル)」が必要なのか?
「面倒だから、公庫一本でいいじゃないか」 そう考える経営者もいますが、それは将来的に非常に危険な「一本足打法」です。
1. リスク分散(倒産防止)のため
もし、あなたの取引先が「A社(100%)」だけだったら、どうでしょうか?
A社から取引を切られた瞬間に、あなたの会社は倒産の危機に扮するでしょう。
金融機関も同じです。 公庫(100%)に頼っていると、公庫のルール変更や、あなたの会社の業績が公庫の基準から外れた瞬間に、資金調達が不可能になります。
「公庫がダメなら銀行へ」「銀行がダメなら公庫へ」と言える「複数の選択肢」を持つことこそが、最強のリスク管理です。
2. 真のゴール「プロパー融資」を目指すため
信用保証協会付融資は、あくまで「実績作り」です。
経営者としての真のゴールの一つは、銀行が「保証協会なしでも、ウチ(銀行)のリスクであなたに貸します」と言ってくれる「プロパー融資」を勝ち取ることです。
プロパー融資は、銀行から「Aランクの優良企業」と認められた証であり、金利や条件面でも優遇されます。
そして、このプロパー融資を勝ち取るためには、その前段階である「保証協会付融資」で、「借りて、返す」という取引実績を、地元の民間銀行と作っておくことが絶対に不可欠なのです。
財務戦略のパートナーとしての「税理士」
「とはいえ、自分の決算書で銀行に通用するのか…」 「公庫と銀行、両方と交渉するのは骨が折れる…」
この複雑な「財務戦略」を、経営者が一人で判断するのは簡単ではありません。 私たち税理士は、会社の「財務部長」として、この戦略を一緒に考えます。
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あなたの決算書を見て、「今なら銀行(保証協会)にチャレンジすべきです」「いや、今は公庫に頼むべきです」という「相談先の選定」を行います。
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民間銀行の担当者を紹介し、「交渉の場」に同席します。
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公庫と銀行の「借入バランス」を考え、長期的な財務戦略(プロパー融資への道筋)を設計します。
まとめ
今回は、追加融資(借り増し)の「相談先」について、公庫と民間銀行の使い分けを解説しました。
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公庫は「創業者・小規模事業者の味方」、民間銀行(保証協会)は「地域密T着のパートナー(将来のプロパー融資候補)」という特徴がある。
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1回目を公庫で借りたなら、2回目はまず「民間銀行(保証協会)」に相談し、「取引チャネルを増やす」ことを目指すべき。
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民間銀行がNGだった場合の「セーフティネット」として、公庫が控えている、という順番が理想。
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公庫一本足打法は危険。「複数の金融機関」と取引実績を作ることが、倒産を防ぎ、事業を成長させる鍵となる。
金融機関との付き合い方は、目先の資金調達だけでなく、5年後、10年後の会社の安定性を左右する重要な「財務戦略」です。
次回、【追加融資ガイド⑥(最終回)】では、この戦略をさらに一歩進め、金融機関(公庫・銀行)と「長く」「上手に」付き合っていくための具体的な3つの原則について解説します。
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