審査に落ちる人が年末にやりがちな「NG事業計画書」
(担当者もウンザリ?)
審査に落ちる人が年末にやりがちな「NG事業計画書」ワースト3選
こんにちは!起業スタートビジョンラボです。
前回の第1回では、「年内に融資実行したい!」という創業者の“焦り”が、日本政策金融公庫の「年末の激混み」状況と重なると、かえって審査が不利になりかねない…という「ホンネ」をお伝えしました。
そして、その「焦り」が最も悪影響を及ぼすものこそ、融資審査の“本体”である「事業計画書」です。
12月の忙しい時期、審査担当者は何十通もの計画書に目を通します。
その中で、「あぁ、またこのパターンか…」と即座に“NG判定”されてしまう計画書には、悲しいほど共通点があるのです。
今回は、『税理士のホンネ』シリーズ第2回として、年末に焦って作成した計画書にありがちな「NG事業計画書ワースト3」を暴露します。
このコラムをご覧になられている皆様の計画書が該当していないか、お手元の計画書と突合しながらチェックしてみてください!
ワースト1:根拠ゼロの「希望的観測」売上予測
年末の駆け込み申請で、最も多く、そして最も致命的なのがコレです。
事業計画書の「事業の見通し」欄に、何の根拠もない「希望的な数字」だけが書かれているパターンです。
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(例)「売上高:月商100万円(年間1,200万円)」
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(例)「集客方法:SNSとチラシを頑張ります」
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(例)「お客様とのご縁を大切にし、リピーターを獲得します」
これらは「計画」ではなく、ただの「願望」や「スローガン」です。
- 【税理士のホンネ】
『頑張ります』は、事業計画ではありません。 審査担当者が知りたいのは、
- 『なぜ月商100万円を達成できると言えるのか?』
という具体的な計算式(客単価×客数×営業日数など)とその数字の裏付け(=根拠)です。
根拠のない『月商100万円』は、担当者から見れば『月商1億円』と書いているのと何も変わりません。
『またこのパターンか…』と、その時点で肩を落としてしまう担当者もいるでしょう。
ワースト2:どこからか「コピペ」したような市場調査
事業計画書には、「創業の動機」や「自社の強み」を書く欄があります。
ここに、ネットで検索すれば誰でも手に入るような「一般的な市場データ」だけを貼り付けている計画書も、非常に多いNG例です。
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(例)「全国(東海地方)の〇〇市場は、今後5年間で年率5%の成長が見込まれており…」
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(例)「名古屋駅周辺は、都市の再開発により今後ますますの発展が期待され…」
もちろん、マクロな視点も必要です。 しかし、担当者が本当に知りたいのは、そんな大きな話ではありません。
- 【税理士のホンネ】
ネットで調べた『市場は5%成長』みたいなコピペ情報は担当者にはバレます。あと意外に知られていませんが、この手の情報は全く意味がありません。
彼らが見たいのは、そんな情報ではなく、『あなたが足で稼いだ“生きた情報”』です。
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『開業予定地の競合店A・B・Cのランチに実際に行って、価格帯と客層を調査した結果、自店は〇〇で勝負できると判断した』
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『平日の午前・午後、休日の午前・午後で、店舗前の通行量を3日間カウントした結果、1日平均〇〇人の通行が見込めた』
こういう“自分にしか書けない情報”こそが、事業計画の信頼性を生みます。
コピペで埋めた計画書は、枠を埋めるだけの無駄な労力に終わることがほとんどです。
ワースト3:曖昧(あいまい)すぎる「資金使途」と「必要額」
これも、焦っている人が陥りがちなミスです。 「何にいくら必要か」を明確にする「資金使途(しきんしと)」の欄が、非常に雑なのが多いです。
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(例)「運転資金:300万円」
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(例)「設備資金:店舗改装費一式 200万円」
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(例)「諸経費:50万円」
これでは、担当者は「なぜ300万円?」「なぜ200万円?」としか思えません。
- 【税理士のホンネ】
『運転資金300万円』。その根拠は何ですか?
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家賃が月20万円だから、その6ヶ月分で120万円。
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仕入が月30万円だから、その3ヶ月分で90万円。
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人件費が月50万円だから、その3ヶ月分で150万円。 …合計360万円が必要です。
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なので運転資金として300万円(残りは自己資金で)申請します。
このように、『なぜその金額が必要なのか』という内訳と計算根拠を明確に示す必要があります。
『なんとなく300万』『キリがいいから500万』という申請では、『事業のお金の流れを理解していないな』と判断され、大幅減額、最悪の場合は否決される可能性もあります。
ホンネの補足
外面(ガワ)だけ立派な計画書ほど、中身(ナカミ)の“粗”が目立つ
ここで、私たち専門家が常々感じている「ホンネ」を、もう一つだけ。
最近は、ネットの情報やAIの進化もあって、正直なところ、見栄えのいい事業計画書(外面)を作るだけなら、誰でも比較的カンタンにできてしまいます。
それ自体は、素晴らしいことです。
しかし、私たちが融資の現場で「一番怖い」と感じるのは、「外面だけがプロ級に立派すぎて、中身が伴っていない」ケースです。
例えば、
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市場分析データだけは豊富なのに、「じゃあ、あなた自身は競合店に何軒行ったんですか?」と聞くと答えられない。
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収支計画の表組みはキレイなのに、「この売上予測の根拠は?」と聞くと、「なんとなく」としか答えられない。
外面が立派な分、面談で中身の“粗(アラ)”や“準備不足”が露呈した時の落差(ギャップ)は、ものすごく大きいんです。
審査担当者に「ああ、この計画書は“借り物”で、この人自身の言葉じゃないな」と落胆させてしまう、最も印象の悪いパターンですね。
計画書という「外面」を整えるのは当然の準備です。
ですが、それ以上に、その計画書に魂を込める「内面」(=あなた自身の足で稼いだ情報、数字への深い理解、事業への情熱)を磨き上げることこそが本質だと、私たちは考えます。
まとめ
年末に焦って提出しがちな「NG事業計画書ワースト3」をご紹介しました。
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根拠ゼロの「希望的観測」売上予測
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どこかから「コピペ」した市場調査
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曖昧(あいまい)すぎる「資金使途」
このコラムを見ながら年末の融資を申し込もうとされていた方で、該当する項目はなかったでしょうか?
年末の忙しい時期に、審査担当者に「この計画書はしっかりしてるな」と手を止めてもらうためには、これらNG例の「逆」をいく、具体的で現実的で、熱意の伝わる計画書が不可欠です。
もし「自分の計画書、ヤバいかも…」と少しでも感じたら、焦って提出する前に、一度立ち止まって見直して計画を練り直してください。
焦って出したところで、否決連絡が来るのがオチです。前回のコラムでも言いましたが、融資申込は焦ったもの負けです。
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